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「音楽縁計画」はやっぱり良い番組(~年度盛典)

10/27に年度盛典を配信し「音楽縁計画」第一季は幕を閉じた。48名の音楽創作者の63首の歌が、延べ24名の歌手によって歌われた。曲の作り手と歌手との出会いの場を作る、という趣旨は大変野心的な試みだったと思うけれど、結果的には大きな成功を収めることができたようだ。

第二季も決まったようで何より。

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「音楽縁計画」微博より 年度盛典は晩会並のセットで力が入っていた

4年がかりの企画

8人の歌手と6組の創作者の「縁」を結ぶ、というのがこの番組の主旨。創作者が試唱し、歌手が気に入った歌の創作者にCDを渡す。創作者はその中から歌ってもらいたい歌手を選ぶ、というのが基本的な手順だ。シンプルに見えるが案外シビアな仕組みで、創作者の中には人生が掛かっている若い人もいるし、歌手も創作者から失望されるような歌は歌えない。

 

番組は刘宇宁のインタビューによれば番組は「4年前から話があった」そうだ。(多分)紆余曲折逢ってようやく実現にこぎつけた、ということなのだろう。

 

そもそも曲を作っている音楽人を集めるのが大変そうだ。48名の創作者がどのような来歴かははっきりわからないけれど、大御所と呼ばれるような音楽人、プロとして活動している人の他に、普段は学校等で教師を務めている人、別の仕事をしながら創作者として活動している人など様々なレベルの創作者が登場した。曲のクオリティも高く、試唱のレベルでも聴かせる歌が多かった。

紹介される曲のレベルが高くなければ歌手と創作者の真剣勝負にならないから当然のこととはいえ、クオリティ管理をするスタッフ側の苦労は大きかったと思われる。

第2季は今から募集をかけるらしく、年度盛典の最中にもアドレスが表示されていた。

 

出演歌手も豪華だった。薛之谦Joker Xueは歌手としても創作者としても参加、周深Zhou Shen、单依纯ShanYichun、黄子弘凡Lars Huang Zǐhongfanがレギュラー出演、周笔畅Bibi Zhou Bichang刘宇宁Liu Yuning 王琳凯Wang Lin Kaiが半分の5本出演。

歌手もこの番組では自分で曲を選べる主体性と、創作者の意図、或いはそれ以上の何かを歌に加えられるだけの技量が求められる。最年少の单依纯はそれが「プレッシャーだった」とインタビューで語っていた。

 

ちなみに一番沢山歌を歌ったのは周深と黄子弘凡の9曲。曲選びも積極的でいろいろなスタイルに挑戦していた二人でも、選びたい曲がなかったり創作者に選んでもらえなかったりで全部の回で歌うことはなかった。この辺り、やっぱりシビアな番組だ。

 

撮影場所TIPS

撮影場所は2か所。選曲パートのロケ地は「江蘇南京四方芸術湖区」というところにあるらしい。この江蘇南京四方芸術湖区には世界の著名な建築家の建物を集めているのだそうで、撮影に使われていたのは恐らく「会議センター」。磯崎新氏の設計だ。確かに何処かで見たようなコンクリート打ちっぱなし…。

コンサートの方はマカオ美狮美高梅(MGM Cotai)の舞台で撮影。明かりが入るととても美しい変わった形の建物で、年度盛典は建物の前に舞台が組まれ借景として使われた。

 

収録スケジュール

中文版Wikiによれば1泊2日で選曲パート4本撮りというスケジュールで、そこから3~4週間(1~6集まではほぼ4週間・7~10集は3週間)空けて舞台パートを4本撮り(5・6期のみ2本撮り)。毎週歌をゲットしていると、この期間で4曲仕上げて舞台で歌わなきゃならない。

…うわ、きつそう。特に若い歌手の皆さんがあまりがつがつと曲を取りに行かなかったのはスケジュールのこともあったのかもしれない。

 

年度盛典はいろいろな意味で総決算

刘宇宁と黄子弘凡のデュエットで始まった年度盛典。それぞれの舞台が素晴らしかったのは言うまでもないけれど、参加した歌手にも楽曲を提供した創作者に対しても、とても気遣いの感じられるものだった。

 

周笔畅、周深が歌った「孤独音楽家」は8期に登場した曲で、歌手から一番CDを貰った曲だそうだ。この曲の歌詞は音楽に関わっている人にとってとても心に響くもので、歌いたい、と熱心に頼む歌手が多かったのもうなずける。

第4期に薛之谦が歌った「租购」は原作者の董嘉鸿が新たに広東語の歌詞を書き下ろして歌った。この曲はQQ音楽(中国の音楽配信プラットフォーム)で熱力値が4000万を越え、番組で歌われた歌の中で一番のヒットとなった。

 

「我不在乎世界如何荒唐」(演唱:陈卓璇)と「終身孤独」(单依纯、黄子弘凡合唱)は、番組の中では歌手の側が歌いたかったにもかかわらず創作者から選んでもらえなかった組合せ。「我不在乎世界如何荒唐」は番組の他に林俊傑が自身のコンサートでも歌ったそうだ。

黄子弘凡が歌った「赫兹就是爱的频率」は一社提供のスポンサーである「山楂樹下」のCM曲に起用されたようだ。

番組で紹介された曲が新たな形で使われ、広がっていくというのは意義深い。「租购」の董嘉鸿は「個人指名で仕事が来るようになった」と言っていたし、音楽創作者を世に出す、という番組の目的の一つは果たされたように思う。

 

番組ではマッチングが上手くゆかず舞台で歌われなかった曲が7首あったらしい。幾つかの曲は年度盛典で新たに披露され、曲を提供した人たちに報いた。

「红灯行」は一番マッチングできなかった曲が多かった第8期の曲。R.E.Dというガールズグループが歌った。

 

「只字不提」は爆弾を点灯させた周深が歌ってくれたのでお蔵にはならなかったものの、本来創作者が歌ってもらいたかったのは薛之谦。ただ薛之谦が歌詞を変更したがった為創作者の欧恒(包安全)と決裂して歌われなかったという曰く付きの曲。年度盛典では周深・薛之谦のデュエットで、薛之谦が変更した歌詞版が歌われた。

欧恒は現役の録音技師・ミキサーで番組当初は仮面をつけていたけれど、年度盛典ではとうとう仮面を外した。ミキサーが歌を作っちゃいけない理由はないし、本人も音楽創作者としての自信をつけた、ということなのかも。

「音楽縁計画」微博より 全ての努力する人達へ贈る「努力的人」

「努力的人」の披露は感動的

もう一曲新たに披露されたのが刘宇宁が歌った「努力的人」。

この曲が披露された第10期、皆いい曲だとほめたものの実際に部屋に向かって創作者と会ったのは刘宇宁一人だけだった。

一つにはスケジュールの問題もあったろう。この時は2日間で7~10期の選曲部分を撮影していて、皆それぞれ舞台で披露する曲を何曲か抱えており且つ舞台披露まで3週間、とこれまでより短い時間しかなかった。

また、この時の創作者は「努力的人」の孙伟以外は皆音楽業界で既に地位を確立している人たちだった。創作者とのミーティングは1時間と時間が限られている。その曲を歌う歌わないは別にして、歌手としては一緒に仕事をしたことのある創作者に挨拶しないわけにはいかない。

曲のタイトル・内容とそれにつけられたキャプション「貴方を泣かせる歌がある」も選曲するのをためらう要因になったかもしれない。歌手として名前が知られるようになった人たちが努力していないわけはないのだけれど、どストレートなこの歌詞を正面切って歌いきるのは勇気が要ると思う。

 

創作者・李泊凡はいつか自分のアルバムを出すことを夢見ながら、デモ用の歌唱やコーラスを仕事にしてきたそうだ。この番組に出演するまで自分の作った曲を発表する機会はなく、カメラの前で歌ったこともなかった。

 

彼の微博には番組収録時のことが事細かに記されている(@李泊凡微博 10/20付及び10/27付)。前日はあまり眠れなかったこと、父親が18歳の誕生日にプレゼントしてくれたネクタイで収録に臨んだこと、カメラが回った途端用意していた台詞を全て忘れてしまったこと。曲を作った時から頭の中に浮かんでいた刘宇宁が実際に部屋に来てくれてとても嬉しかったけれど、「考えます」と言われ、ひたすら「戻ってきて」と念じていたこと…。

 

結局李泊凡は刘宇宁や他の歌手からCDを受け取れなかった。収録後刘宇宁は再び彼のところに来て「今回は撮影があるので無理だけれど、君の歌は好きだし素晴らしかったから、機会があったら必ず一緒に仕事しよう」と言ったのだそうだ。

 

ただコーラスの仕事に未来がない、と感じていた李泊凡にとってこの番組は最後のチャンスで「努力的人」は自分が書く最後の曲だった。収録翌日、セットが壊された収録現場を見に行って「自分の夢が本当に終わった」と記している。

 

その後李泊凡は歌作りを諦められないまま、大学の頃勉強した動画編集の仕事を捜した。番組スタッフから「刘宇宁さんが年度盛典であなたの歌を歌いたがっているけどOKか?」と連絡があった時、屋台で鸡蛋灌饼を食べていた李泊凡は路上で大笑いしたあと号泣したそうだ。

新しい服を買った李泊凡はマカオ行きの間ずっと「黒夜一束光」を口ずさんでいた、と微博に書いている。

 

李泊凡の微博には、ごく普通の音楽を志す人がこうした番組に出演した時のジェットコースターのような感情の起伏が余すところなく書かれていて、読んでいるこちらも心揺さぶられる。同時にこうしたオーディション番組がどんなに人の人生を左右するか、とてもよく分かる。

ちなみにこれらの記事は番組OAを待って発表されており、その点も李泊凡の番組や刘宇宁に対する配慮が感じられる。

 

年度盛典で刘宇宁が「努力的人」を歌い終わった時、李泊凡は再び号泣し言葉が出てこなかった。その後刘宇宁は多くの音楽・映像関係者が集まる「微博視界盛典」の大舞台でもこの歌を歌った。

李泊凡の微博の現在のフォロワー数は三万人に増えている。

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李泊凡の物語は現代のおとぎ話だ。彼が本当に成功できるかどうかはこれからの本人の努力次第だけれど、それでもそのきっかけを確かに掴むことができた。

音楽を志す李泊凡のような人たちの気持ちを、きちんと汲み取って形にした刘宇宁の姿勢も素晴らしいと思うし、何よりこうした人たちに対して真摯に向き合った番組の姿勢を素晴らしいと思う。

第2季も良い番組であってほしい。

期待度MAXで待ってるからね!

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題名:音楽縁計画 音乐缘计划 音樂緣計畫 Melody Journey

総合P:姜方明 プロデューサー:张鹏宇 杨子韧 総編劇:廖猫婧 音楽総監:刘卓

出演者:薛之谦 周深 单依纯 黄子弘凡 刘宇宁 他

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