最近古装活劇系ドラマが少なくてアクション成分が足りない。少しでも活劇成分を採りたくて马伯庸の小説を読み始めた。…やっぱり馬伯庸の紡ぐストーリーは面白い。ならば马伯庸原作でまだ見ていないドラマを観ればいいんじゃ、と思い立って観ていないドラマはないか調べてみた。
-------------------------

「両京十五日」はスリリングな脱出劇
と言ってもまだ読んでいる最中。感想は読み終わったら改めて書こうと思うけれど、概要だけ紹介。
明第四代皇帝・洪熙帝の御代(ということは1425年)。太子・朱瞻基は北京から南京に遷都の下準備の為、船に乗ってやって来る。ところが南京上陸寸前に船が爆破、出迎えた高官たちの多くが死傷、朱瞻基は何とか助かったものの叛乱軍から追われることに。蜂起したのは南京駐在の大鑑・朱卜花と白蓮教、その背後には糸を引く誰かがいるらしい。
朱瞻基は現地の下っ端役人・于謙、無能と評判の捕吏・呉定縁、女医の蘇荊渓と共に、南京を脱出、何かが起きているであろう北京に向かおうとするが…。
洪熙帝の在位が1年なこと、洪熙帝の即位の裏にはいろいろあったことは「大明風華(邦題:大明皇妃)」で学習済(笑)。于謙は実在の朱瞻基の家臣で、土木の変で正統帝(朱瞻基の息子)が捕らえられた際の果断な対処で知られる謹厳実直居士。「大明風華」でとても好きなキャラでもあったので、大活躍で嬉しい。
小説で登場する南京の地震や叛乱自体も史実らしい。勿論、朱瞻基がその後即位することは知っているけれど、展開自体が意外でスリリングなので、ドキドキしながら読み進めている。
「両京十五日」は2024年の文春のミステリーベスト10海外部門で3位に選ばれている。
中国でのドラマ化も決まっているようで、イメージポスターが発表済だ。
马伯庸はどんな作家?
马伯庸(Ma Boyong マー・ボーヨン)についても一応簡単な紹介を。1980年生まれの中国の小説家。歴史に造詣が深く代表作の多くは歴史小説だけれど、SF短編なんかも書いている。日本ではSF系の短編が3つ(どれもアンソロジーに入っている)、長編は「両京十五日」しか翻訳されていないらしい。
一方、马伯庸原作のドラマは殆どが日本上陸を果たしていることが判明。…未見のもの、あるんだろうか?(以下は、製作年度ではなく私が視聴した順番です。)
原作:長安十二時辰
編劇:爪子工作室 総導演:曹盾「九州·海上牧雲記」
出演:雷佳音 易烊千玺 周一围
WOWOWの中国ドラマ枠の初期に放映された作品。明記されないものの舞台は唐・玄宗の時代。皇帝と太子の対立・朝廷の権力争いを背景に、長安を火の海にしようとするテロリストとの闘いが繰り広げられる。唐代の街の様子から衣装・メイクまでが見事に完全再現されている、と評判になった作品。
「中国版24」と宣伝されたこと、1週間に2話ずつの放送だったことで印象が大分間延びしてしまった。事件そのものの面白さもさることながら、それまで奸計を巡らしまくっていた朝臣達が、菓子一つ摘まむのにもビビりまくる「聖上」が一番怖かった気が。
それと周一围が大変かっこよくて、一度で名前と顔を覚えた(笑)。
三國機密之潛龍在淵
(邦題:三国志Secret of Three Kingdoms/三国志秘密の皇帝)2018
原作:三國機密之潛龍在淵
編劇:常江 導演:游达志、郑伟文
出演:马天宇 韩东君 万茜
三国志に登場する後漢最後の皇帝が双子で、しかも司馬懿と義兄弟というトンデモ設定を正史の中にぶち込んで、破綻なく綺麗に成立させるという離れ業に驚愕した作品。思わせぶりなポスターや配役でラブ史劇っぽく捉えられそうだけれど、内容は骨太。多分史実(というか三国志演義)を知っている方がより楽しめる作品でもある。
この作品で初めて原作者・马伯庸の名前を覚えた。
風起洛陽(邦題:風起洛陽~神都に翔ける蒼き炎~)2020
原作:洛陽
編劇:青枚 武聪 導演:谢泽「珠帘玉幕」(総導演) 陈熙泰
出演:黄轩 王一博 宋茜 宋轶
こちらもWOWOW枠で観た。時代は唐代というか武周(武則天が即位していた時期)。宗教団体と結び政権転覆を謀る者たちと、その陰謀を止めようとする者たちの物語。
ストーリー自体は謎が次から次という感じで大変面白かったのだけれど、途中に挟まれる恋愛話のお陰で些かもっさりした印象。洛陽の繁栄の影で、狭い貧民街に押し込められた人々の最底辺の暮らしはかなり悲惨で、印象に残った。
多分史実と虚構がないまぜになっているんだとは思うけれど、何分この時代にあんまり詳しくなくて分からない…。
風起隴西(邦題:風起隴西-SPY of Three Kingdoms-) 2021
原作:風起隴西
編劇:金海曙 金昱 導演:路阳「绣春刀」
出演:陈坤 白宇 聂远
時代は三国志、中でも「街亭の戦い」以降の時期。蜀と魏の戦いの背後に蠢く密偵たちの物語。暗くて質素な室内、茶色メインの渋い衣装…三国志時代をそのまま再現したような舞台で緻密で複雑なストーリーが展開する。この時代だって情報は極めて大事。戦場での華々しい物語の陰でこんな風に激しい諜報戦が行われていたのかも、と思うだけでワクワクする。
陈坤、白宇と眼福な上にその他の叔父さんたちも渋いお芝居を披露。杨颖(アンジェラ・ベイビー)が抑えた演技でとても良かったのも記憶に残る。すごく面白かったのだけれど、話が難しくて一度見ただけでは分からなくて何度も観なおした記憶が。
後にWOWOWさんが放送してくれたおかげで、中文字幕では分からなかった処もはっきり分かった。日本語字幕って素敵。
顯微鏡下的大明之絲絹案(邦題:天地に問う~Under the Microscope)2021
原作:顯微鏡下的大明(6つの事件の中の一つ)
編劇:马伯庸、周榮揚 導演:潘安子「重启之极海听雷」
出演:张若昀 王阳 吴刚 费启鸣
原作は明代の記録文書から拾った6つの事件を描いた連作の一つ。いずれも当時の司法制度や政治に巻き込まれた市井の人々を描いているらしく、面白そうなので誰か日本語で出版してくれないだろうか。
この作品だけは以前に記事を書いたので、詳細はそちらを参照いただけると嬉しい。要は「自分たちの地の税制が不公平」なことを見つけてしまった青年がそれを是正しようとしたら「大問題」になった、というお話。こちらも、というか马伯庸原作作品は殆ど全てWOWOWさんが放送しているってことが分かった。
網絡凶鈴(邦題:戦慄のリンク)映画 2020
原作:她死在QQ上
導演:鶴田法男「リング0」「ほんとにあった怖い話」
芸術監督:马伯庸
出演:孙伊涵 傅孟柏「成化十四年」(台湾)
この作品が马伯庸原作とは知らなかった。1時間半しかないので、サクッと観てみた。
主演俳優が中国・台湾、監督が日本ということで全アジア向けを狙ったように思える。
男主の傅孟柏は「成化十四年」で髭を生やして渋い「隋州」を演じていた人だけれど、今回は普通の男の子、という感じ。女主はドラマ版「唐人街探案2」に出ていたみたいだけど…うーん、覚えがない。監督さんはテレビのホラーものを沢山作っている人らしい。
お話はよくあるネットホラーで、あまり新味はない。ネット上で共同でホラー小説を書いていたグループのメンバーが次々と自殺、友人だった男主・女主がその謎を追う。
ホラーの本質って「不条理」なんだと思う。理屈に合わない、現実には起きないことに直面する時に感じる本能的な恐怖。理が勝ち過ぎたホラーはあんまり怖くない。
日本未上陸作品
日本に上陸した作品は観尽くしていたことが分かった。日本に上陸していない作品はどうやら下記のみ。
古董局中局/古董局中局之鑑墨尋瓷
原作:古董局中局全4集のうちの1~2?
導演:五百 余庆(第一季)/费振翔 方刚亮(第二季)
編劇:刘殷实 卢源(第一季)/张小年 刘颖 刘奎序(第二季)
出演:夏雨 乔振宇 蔡文静(第一季)/夏雨 魏晨 阿丽亚(第二季)
古董局中局(電影)
原作:古董局中局
導演:郭子健
編劇:朱炫 黄海 郭子健 范文文 潘依然 常小琥 王亚鹤
出演:雷佳音 李现 辛芷蕾
原作は骨董品店の店主である主人公が、鑑定士の友人と共に偽造品を生業とする謎の組織と闘う物語、らしい。骨董品そのものや骨董品売買に関する知識が満載、とのことで面白そう。第一季と第二季は主人公以外キャスト・スタッフが入れ替わっているのでどうなんだろう?電影版の評判はあんまりよくなかった気がするけど、李现が出てるし主題歌を刘宇宁が歌ってるし、MVだけ見たけど面白そうだった。観たい。
未公開及び製作中
製作年度的に出来上がっていそうなのに未公開な作品、現在製作中な作品はこちら。
西遊揺滾記(電影) 2017
原作:西遊揺滾記
西遊ロック記、とでも訳せばいいのか(揺滾はロックンロールの意)。优酷製作の網絡電影みたいで2017年のイベントに名前があったらしいけれど、スタッフ・キャスト共に詳細不明のまま。
敦煌英雄(電影)2023
編劇:马伯庸 導演:曹盾「長安十二時辰」
出演:章宇 窦骁 吕凉
どうやら原作なしの马伯庸書き下ろしの脚本のようだ。公開日も決まっていたようなのに、突如公開延期になったらしい。豆瓣では2025年公開、になっている。
安史の乱以降、吐蕃の勢力下におかれた沙州(=敦煌)。唐軍は全員が戦死し、護るもののいなくなった沙州で、人々は唐の勢力下に戻る為の叛乱を組織する…というような内容で(by百度百科)なかなか面白そう。
長安的荔枝(電視劇)2024撮影終了
原作:長安的荔枝 編劇(故事顧問)も马伯庸が担当
導演:曹盾
出演:雷佳音 岳云鹏 安沺
上記映画と同じ曹盾が導演を担当。2024年の7月に撮影が終了しているので、順調なら今年中に見られるかも。
唐の小役人の主人公が陥れられ、岭南(ベトナムとの国境辺りらしい)から長安までライチを運ぶ、という困難な任務を引き受けざるを得なくなる。その苦難の道のりを描いた作品、ということらしい。
大明書商
勝訊視頻が「長安的荔枝」と同時に発表したのが「大明書商」なんだけど、原作がどの作品なのかすら不明。その後の消息もない。イメージポスターのみ発表されている。
--------------------------------
马伯庸の作品はあらすじだけでも凄く面白そう。小説の方ももっとたくさん翻訳が出ればいいのに。とりあえず「古董局中局」を見る方法を捜しつつ「長安的荔枝」辺りを待つことにしようっと。