こんなにいつまでも暑いとせめて気分だけでも涼しくなりたい…そういう時はやっぱり怖い話が一番。でも中国ドラマにホラー系ってあったっけ?まあいいや、中国・香港・台湾・韓国の映画とドラマの中で「怖いなー」と思ったものを集めてみよう。
自分がこれまで観てきた作品から選んでいるので、凄く有名な作品とかが抜けているかもしれませんが、ご容赦ください。
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幽霊系
どうもこのジャンルは映像と相性が悪い。香港映画の名作「倩女幽魂(邦題:チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」の幽霊は美しいけど怖くはない。中国原産の「牡丹灯篭」だって落語で聴く方がずっと怖い。日本の「貞子」に匹敵するインパクトの作品は見つからないけど…。
返校(台湾・ドラマ) 2020年
台湾のゲーム(日本でも遊べる)の映像化。映画版もあるけど、ドラマ版の方がディテールが詳細。
主人公の女子高生が転入した学校には立ち入ってはいけない旧校舎があった。そこに彷徨うう幽霊は誰にも言えない秘密を抱えていた…。
事件を紐解いていくと「悲情城市」や「牯嶺街少年殺人事件」でも扱われていた、台湾が戒厳令下に置かれていた頃の悲劇が浮かび上がる。幽霊自体はそこまで怖くはないけど、背後にある白色テロ時代の台湾の限りなく暗い雰囲気と過去の出来事そのものが恐ろしく悲しい。
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題名:返校 返校 Detention Detention
原作:ゲーム Red Candle 「返校」
監督:蘇奕瑄 莊翔安 劉易
出演:李玲葦 韓寧 黃冠智
致命遊戯(中国・ドラマ)
中国ドラマだけどブロマンス故中国では見られない(笑)。そもそもゲームの中に入って世界の都市伝説を体験する、でもゲーム内で死んだら現実でも死んでしまう、という枠組みのドラマで元ネタ探しがとても楽しかった。
幾つかのエピソードに分かれるけれど、怖いと思ったのは日本の童謡が元ネタの「佐子(元ネタが日本の童謡「さっちゃん」)編」。「学校」ってホラーに登場すると無条件に怖い気がする。その他のエピソードも都市伝説やら昔からの言い伝えやら仄暗く、薄気味悪さが漂っていてナイス。
作品についての詳細は下記記事参照のこと。
胭脂扣(邦題:ルージュ)(香港・映画) 1988年
「怖い」という意味では全く怖くないけれど、好きな映画なのでご紹介。
新聞記者のカップルの前に現れた民国時代のチャイナドレスをまとった女性の幽霊。彼女は心中した恋人がいつまで待っても来ないので探しているのだという。気の毒になった二人はその男性を探し始めるのだが、真相は苦いものだった…。
民国時代の遊郭での過去話が大層美しい。梅艷芳 Anita Muiと張國榮 Leslie Cheungの醸し出す爛熟した花のような雰囲気の美しさ、気怠さ。カメラワークも美しい。
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題名:胭脂扣 Rouge
編劇:邱剛健「夢中人」「阮玲玉」/李碧華「霸王別姬」
導演:關錦鵬Stanley Kwan Kam-Pang「阮玲玉」
出演:梅艷芳 Anita Mui 張國榮 Leslie Cheung

呪い・呪詛系
このジャンルは台湾の独壇場。呪の文句やらお札やら薄暗い祠堂やらが登場するだけでも生理的に怖いんだけど(お札がべたべた貼ってあるだけで逃げ出したくなるのはどうしてだろう?)何よりあのじっとり蒸し暑く纏わりつくような空気感が気味悪い。
紅衣小女孩(邦題:赤い服の少女 )(台湾/映画) 2015年
第一章「神隠し篇」第二章「真実」、続けて見ないと真相が見えてこないので、一緒に見るのをお勧め。前日譚にあたる第三部「人面魚」があることは今回初めて知った。観てみようっと。
「赤い服の少女が森に誰かを連れて行ってしまう」という伝説通りに自分の身の回りの人々が神隠しに。一人が戻ってくると別の一人がいなくなり、写真には赤い服の少女の姿が。真相を究明しようとする主人公にも危機が訪れて…。
日常に変異がじわじわ入り込んでくる。日本とあまり変わらない生活なのでリアルに怖い。逆に本格的に少女が登場してくると怖さが薄らいでしまうのはご愛敬。
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題名:紅衣小女孩 The Tag-Along
編劇:簡士耕「返校」(映画版)
導演:程偉豪
黄河River Huang「模仿犯」
咒(邦題:呪詛)(台湾/映画) 2022年
オープニングの錯覚テストから気味悪い映画。かつての自分の行いで罹った呪詛が子供に降りかかってしまい、母親は何とか解こうと手を尽くすが…。
一人称視点の映像自体に新味はないし、母親の行動は因果応報であまり気の毒にも思えないのだけれど、出来事そのものや舞台となる村が何とも気味悪い。頭で考えるより肌で感じる「怖さ」。台湾ホラーは後味が悪い(ハッピーエンドやほっとする展開にならない)のが特色の一つだけれど、この映画のエンドも薄気味悪さが残る。
中文版Wikiには映画の元になった実話があると書かれている。実話もひどく奇妙な話でますます後味が…。
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題名:咒 Incantation
編劇:柯孟融/張喆崴
導演: 柯孟融 Kevin Ko
出演: 蔡亘晏 黃歆庭 高英軒
番外:「盗墓筆記」シリーズの紙人形(中国/ドラマ・映画)
「盗墓筆記」は謎だらけの遺跡を探険する冒険ものだけれど、遺跡というか墳墓の中は、スーパーナチュラルな罠で溢れている。
虫さんや蛇さんみたいに生理的に「いやあ!」ってものもあるけれど、怖いなあと思ったのは映画版「盗墓筆記」で祠堂に置かれていた大量の紙人形(お盆とかに燃やすやつ)。気が付くと一斉に向きが変わっていたりして、気味悪い。
等身大の紙人形がいつの間にか背後に迫っていたりするのも怖かった(笑)。
ヴァンパイア・狼男系
アジアのホラーにヴァンパイアや狼男は殆ど登場しない。これらの怪物は「十字架」「銀の弾丸」に象徴されるようにキリスト教と関係が深いからなのかも。
冰雪謠(中国・ドラマ)
思いついた唯一のヴァンパイアもの。少しも怖くないけど高偉光のヴァンパイアが素晴らしく美しいので(中洋折衷の衣装も素敵)目の保養。舞台も冬なんで涼し気。詳細は下記記事に。
密室系
「ソウ」とか「キューブ」等に代表される密室系ホラーはアジアのドラマ・映画にはすごく少ない、ということを今回発見。
閉鎖空間で無理やり殺人ゲームをやらされるのは「イカゲーム」くらいしか思いつかない。このジャンルは日本のドラマや映画には多いのに(「イカゲーム」系なら「ライアーゲーム」「カイジ」密室系なら「人狼ゲーム」等々)、中華系では殆ど見かけない。
上にあげた「致命遊戯」と「19层」くらいか。「19层」についてはこちら。
ゾンビ系
ゾンビ系が大の得意なのは韓国だ。「全速力で走るゾンビ」はまじ怖い。名作も多くて有名なゾンビ映画「新感染」の他にも「今私たちの学校は…(この題名からは想像できないけどゾンビドラマ。日本の“ゾンビ+学校”のまったり感は全くない)」「Sweet Home(韓国ウェブコミック原作。厳密にはゾンビではなく感染者は怪物に変身してしまう。ボロアパートの決して善人ばかりでない住人達を描いて秀逸)」等々、ゾンビが好きなら(笑)是非。
正直韓国のゾンビものは何見ても怖くて十分満足できるんだけど「中国ドラマが好き」という人向けだと思うのはこちら。
キングダム(韓国・ドラマ) 2019年
日本の映画とタイトルが被っているので探しにくいかもしれないけれど「古装+ゾンビ」という新機軸を打ち出した記念碑的作品。セカンドシーズンまで作られたけど面白いのは圧倒的にファーストシーズン(しかも話も一応終わっている)。
君主が後妻を貰ってしまった為都に居られなくなってしまった世子。都からの刺客が迫る中たどり着いた辺鄙な村には謎の病が流行っていた。偉い役人はほぼ脱出してしまった村で、夜な夜なものすごい速さで迫って人を襲う集団を前に、世子と薬師の娘は人々を守ることができるのか?
ゾンビとパンデミック、世継ぎ争いと都での陰謀。それらが上手に合わさっていてとにかくお話が面白い。陰謀絡みの話だけでも十分スリリングだし、籠城戦だったり、水際作戦だったり、宮中での戦闘だったりと戦闘シーンも迫力満点で本格的。
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題名:킹덤 Kingdom
脚本: キム・ウニ
監督:キム・ソンフン
出演: チュ・ジフン リュ・スンリョン
哭悲(邦題:哭悲/THE SADNESS)(台湾・映画) 2021年
こちらは台湾のゾンビもの。なかなか頑張っているんだけど、エログロの部分がインパクト大であんまり後味がよくない。台湾のホラーは後味の悪さも持ち味の一つ、と言われればそうなんだけど…。
或る日突然台湾で流行し始めた未知のウィルス。感染者は欲望を一切抑えられず、思いのままに人を凌辱、殺害し始める。恋人を救いに駅に向かった青年は、彼女と再会できるのか…。
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題名:哭悲 The Sadness
編劇・導演:賈宥廷
出演:朱軒洋 雷嘉納 王自強
逃出立法院(邦題:ゾンビプレジデント)(台湾/映画) 2020年
所謂B級ゾンビコメディなんだけど、台湾の国会議事堂で議員が皆ゾンビ化してしまう、という設定が馬鹿々々しくて面白く、展開もスピーディで飽きさせない。「哭悲」よりずっと気楽に観られて笑えるのも○。
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題名:逃出立法院 Get The Hell Out
編劇:簡士耕 王逸帆 楊宛儒
導演:王逸帆
出演:賴雅妍 禾浩辰 庹宗華
やっぱり怖いのは人間、系
人の所業がホラーより怖い、という中国現代ドラマは結構ある。古装探案ものの殺人事件は大抵「一見人ができるとは思えない」ような超常現象、或いは残虐なものが多い。結局は人間が一番怖い、というのが中国ドラマの特徴?事件は探偵役がロジカルな解決をしてくれるので、余り怖さは感じないけれど。
漂白(中国・ドラマ) 2025年
遺体処理している隣の部屋で平気でご飯を食べている犯人グループはそれだけで恐ろしい。手慣れた様子でこともなげに遺体の解体・処理してゆく様は下手なホラーより怖いけれど、潜伏してしれっと普通の生活を送る、というのはもっと怖い。極めつけはこのドラマが実話を基にしているということ。詳細はこちら。
繁城之下(中国・ドラマ) 2023年
古装探案ものでどれが一番怖かっただろうと考えてみたんだけれど…。「唐朝詭事録」はよくできたドラマで面白いんだけど、怖いかというとそこまでではない。いろいろ考えた結果「繁城之下」を挙げてみた。事件の顛末が明らかになるにつれ、犯人の起こしたことの恐ろしさ、それをさらに隠蔽しようとする浅ましさが際立つ。歳月を経ての人の変わり様が恐ろしい。
不条理系
不条理なストーリーを面白く見せるのはそもそも難しいし、話に筋が通らないのに怖いというのは更に上級。

那夜凌晨,我坐上了旺角開往大埔的紅VAN(邦題:ミッドナイトアフター)
題名を直訳すると「あの夜更け、私は旺角から大埔行の紅VAN(香港のミニバスみたいなの。旅行者は極めて利用しにくい)に乗った」。
香港映画は長い間観てきたけれど、ホラー系はどちらかというとコミカルになってしまって怖ろしくはない。90年代半ば「香港ノワール」「武侠片」に続いてブームになった「猟奇片(実録事件もの)」もエログロの要素が強く、怖いわけではなかった。この映画は怖い。まるで香港の「黙示録」みたいだ。
ある夜、小型バスに乗り合わせた客と運転手以外、香港から全ての人が消えてしまう。その乗客もバスを降りると一人また一人と殺害されてしまう。何が起きているのかさっぱり分からないまま乗客たちは右往左往することになるのだが…。
話にまとまりはなくエピソードが重なっていき、登場人物が消えていく。ただ一つ一つのエピソードや登場人物に託された「暗喩」を考え始めると、ひたひたと恐ろしさが込み上げてくる。例えばD・ボウイの「スペースオディティ」をスピーカーで流している丘まで行こうとすると、謎の軍人たちと真っ赤な血のような雨がそれを阻止するくだり。ボウイはイギリス人で、この曲は虚空に放り出されてしまった宇宙飛行士と地上の管制との「最後の会話」を描いたものだ。赤い雨や軍人が意味するものは…この映画がつくられたのは2014年。2020年、人のいないコロナ禍の香港はこの映画のラストそっくりだった。
一見すると奇妙で残酷なエピソードが連なるだけなので、日本でのこの映画の評価は余り高くないようだけれど、そのことについては反論したい、と観た時から思っている。
この映画について語りたいことがまだあるけれど、いろいろ細部を忘れてしまってもいる。観返したら、ちゃんとまとめたいと思う。
豆瓣見ていたら香港でドラマ化の話が進んでいるみたいだ。2030年完成予定…遠い。
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題名:那夜凌晨,我坐上了旺角開往大埔的紅Van The Midnight After
編劇:陳輝虹 江皓昕 陳果
導演: 陳果 Fruit Chan
出演:黃又南 文詠珊 徐天佑 惠英紅 任達華
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蒸し暑い夜はまだまだ続くみたいなので、怖いドラマ・映画で涼をとりつつ、何とか乗り切りましょう!