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「唐朝詭事録之長安」(~35集)で気になることを調べてみた

「唐朝詭事録之長安」とうとう最後の事件を残すのみになった。前2作に比べ妖の要素は減り、むしろ社会問題や当時の習俗をふんだん盛り込んだストーリーが展開された今作。知らない事ばかりで気になる。

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「唐朝詭事録之長安」微博より 相変わらずポスターが凝っていて楽しい

第三案「白澤的蹤跡」

幻の瑞獣探し。山寺に怪しい人物たちが集合、という構図はワクワクするし、話が意外な方向に展開していくのも面白かった。

瑞獣の話って日本ではあんまり聞かない気がする。麒麟鳳凰は知っているけど「白澤」ってどんな獣なんだろう?

百度さんによると「言葉を話し、万物を理解する。王に“徳”がある時に現れ一切の邪気を払う」生き物だそうだ。唐代だけでなく古くは黄帝の時代から明や清の時代の書物に至るまで記載がある。残された白澤図や石像は確かにドラマに登場するような造型だ。ただ元史には「虎の頭、紅い髪と角、龍の体」を持つと記されている。

 

この事件で公主が詠みあげる「千年万岁,椒花颂声」は実際に太平公主(公主のモデル)が上官婉児(唐代の女性詩人で女官・政治家)の墓に刻んだ墓碑銘と同じなのだそうだ。2013年に西安で発掘された墓誌に記載があるとのこと(勝訊網25.11.24)。

 

第四案「諾皋記」

ある男とその妻と友人の複雑な関係を描いた事件で、他の案件とは少々テイストが違う気も。

この話の冒頭で裴喜君たちは「酥山」の店を開く。かき氷みたいに見えるけどやっぱりかき氷やアイスクリームの原型のような甘味らしい。乳製品である酥を煮詰めて蜂蜜を加え(コンデンスミルクみたいな感じ?)氷の上に注ぎ整形し、再び凍らせる。山のような形になるので「酥山」と呼ばれた。故宮博物館のカフェで再現したものを食べられるんだとか(笑)(百度百科)。

酥山の店の開店シーンではもう一つ重要な情報がある。鶏公が持っている書類に書かれた日付がそれで「先天二年六月」。実は太平公主が乱を起こすのはこの年の7月(網易25.11.23)。「唐朝詭事録」のシリーズ自体非常に短い期間の物語で、盧凌風たちはすごく働き者(笑)。

ちなみにもっと具体的な日付は第七案「借齢者」に登場し、6月23日だ。

 

第五案「旗亭畫壁」

この話、元ネタがあって唐代の「集異記」に収められた物語なのだそうだ。王昌齢・王之渙・高適という三人の詩人が酒楼で詩を競い合ったという話で、中国では有名なのだそうだ(勝訊網 2025.11.24)。

詩人は唐代でも憧れの職業だったことがよく分かるエピソード。三人の詩人が酒楼で詩を競い合うが、そこに呼んだ芸妓が実は…、というお話。珍しく蘇無名たちが出し抜かれることになっている。

ちなみにこの案で登場する琵琶は日本の正倉院に収められている琵琶(螺鈿紫檀五絃琵琶のことか?)をモデルにしているらしい(勝訊網25.11.24)。

 

第六案「去天尺五」

まず題名が分からない!調べた処「去天尺五」は成語で、人の地位や権力が非常に高く天にまで届きそう(天まで一尺五寸)という意味。

街で大商人ばかりの連続殺害事件が発生。意外な犯人というのが事件のミソなので詳しく言えないけれど、士族の「中国の文化を担ってきたのは自分たちだ」という強烈な自負が感じられる。

士農工商」ってそういえば中国由来の言葉だった。中国の古装ドラマって主人公は大抵「士」(かたまに「商」)に属するので身分格差のことは忘れてた…。日本では江戸時代に発生する士族の没落と商人の隆盛による身分制の矛盾、そこから生まれる問題は、中国では唐代から起こっていたようだ。

 

ドラマに登場する「閥閱」、これもどんなものか分からない。ドラマの中では石柱みたいに見えたけど、これが発見されると宴会を催すようなものなのか?

閥閱とは官僚の家の門に建てられた柱のことで左の「閥」は業績が、右の「閱」には職歴が記されている。官吏としての功績を記す記録簿でもあり、これがあるということはその家が“名家”であることを示す(百度百科)。なるほど、発掘されてお祝いをしたくなる気持ちもわかる。

 

第七案「借齡者」

このシリーズらしい奇譚。登場する職業「仵作」は近年中国ドラマにもたくさん登場するようになったけれど、今でいう“検視官”。ただ仵作は遺体を扱う職業故に「賤籍(身分制で最下層)」に属する。その辺りの差別は「花間令」の序盤でも描かれていた。「贱籍枷锁」という言葉でも分かるように賤籍から抜けるのはとても難しかったようだ。

 

天子は活躍目覚ましい仵作に出世の道を与えたいと思い「仵作大会」を開こうと思い立つ。一位になった腕の良い仵作は賤籍を外れ、前途が開かれる。ところが有力候補の仵作が殺害されてしまう。一方街では中に銭の入った赤い袋を拾った者が殺害されるという連続殺人事件が発生。絡み合う二つの事件の真相は…。

 

狄仁傑が世話になったという仵作の先達・耿无伤が患っている毒疮は皮膚の潰瘍のこと。皮膚潰瘍の原因は様々だが糖尿病や動脈硬化膠原病などから生じる皮膚潰瘍は治りにくい(関西医大HP)。

ちなみに耿无伤が使用していた毒・马钱子はマチン(発音まんまだ)という植物で猛毒ストリキニーネを含む。インドやスリランカ、中国の南部や台湾でも栽培されていて医療用として用いられることもある。痙攣誘発剤でもあるそうだ(百度百科)。

 

ドラマの中に登場する「借齢」の方法は見つけられなかったけれど「借寿」という迷信は中国では昔からあるようだ。沐浴をはじめとする儀式を通じ、祈禱者が自らの命を削り病者の命を長らえさせる、というもの。清の時代にも記載があり、その頃まで信じられていたらしい(百度百科)。

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事件の面白さもさることながら、当時の建築や衣装、流行していたものから民間伝承に至るまで、実に巧みに組み合わされていることに驚く。

残りはいよいよ一話。公主と天子(とまだ権力の座を諦めていないっぽい太上皇)の争いが表面化するんだろうか?観てしまうのが勿体ない気もするけど、これから観ようっと。

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題名:唐朝诡事录之长安 Strange Legend of Tang Dynasty Ⅲ 40集

導演:巨兴茂

編劇:魏风华 郭靖宇

出演:出演:杨旭文William Yang Xu Wen 杨志刚Yang Zhi Gang 郜思雯 陈创 孙雪宁

 

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