今年3本目の成毅主演ドラマ。「赴山海」(豆瓣5.9)「天地剣心」(豆瓣6.0)と厳しい評価が続いたけれど、今作も…すごく心配(笑)。
ここから先は8集までのストーリーのネタバレが含まれます。おまけにだいぶ辛口です。ご注意ください。
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舞台設定はこんな感じ
まずは冒頭に説明される、舞台設定から。ちなみに「長安」とはいうものの、完全架空歴史。
太祖(建国皇帝)が急死し、虎賁将軍である言風山(张涵予 飾)が幼帝・蕭文敬をたて、朝廷を支配。逆らう王族を殺害し言皇帝と噂されるほどの権力者になった。先帝の長男・蕭武陽(刘奕君 飾)は北方で挙兵し王権を奪還。蕭文敬(周奇 飾)は王位を譲るのを良しとせず、王宮に火を放ち焼死したと思われた。…が焼死体は偽物。遺体から虎賁軍の令牌が発見されるに及び、新たに皇位に着いた蕭武陽は、蕭文敬が虎賁軍と共に落ち延び皇位奪還の狼煙を上げると考えた。
謎の老臣が新帝に一人の男を推挙する。その男の父・劉子溫は虎賁の将軍だったが15年前に言風山の裏切りに会い、一家は滅亡。幸いにも生き残った遺児は復讐を誓い準備を進め、劉家の残党も協力しているという。新帝はその男、謝淮安(成毅 飾)を長安に呼び寄せることにした…。
架空ではあるものの、元ネタはありそう。明の第三代・永楽帝の靖難之役(朱棣が甥から帝位を簒奪)がそれらしい。靖難之役も幼帝は皇宮を逃げ出し、見つからないままだった。
“琅琊榜”風?な成毅
主人公・謝淮安は淮南という片田舎で県令に仕える主簿を務めている。県令役が王茂蕾(「延喜攻略」春望役)だったりするんで、もう少し展開があるのかと思ったけどほぼ第一集だけ。
…ここまではなかなか面白い。
第二集以降、舞台を長安に移してからは(季節が冬になったせいもあって)衣装も白のモフモフで“琅琊榜”風。護衛の剣客・葉崢(佟梦实 飾)もついてるし。
ここからが本格的に復讐譚になるわけだけれど…。
油断ならなさそうな軍人皇帝とこれまた油断ならなさそうな高官との出会いの前に、まずは「一生会うつもりはない」と言っていた妹・白莞(徐璐 飾)と再会。ここでは名乗らないけれど、序盤から妹が絡んでくる展開とは思わなかった。
妹の師父の老人は、新帝は簒奪者だとして抗議の死を遂げてしまう。…新しい皇帝もあんまり評判が良くなさそうだ。この師父はどうやら虎賁と繋がっていたようなので扇動の一手段かもしれないけど、抗議の自死をするほど新帝が酷いのか、どうも釈然としない。まあ新帝を演じているのが常にヴィランな刘奕君なので(笑)視聴者としては、何かあるんだろうな、とは思うけど。
…以降、7集までに朝廷の話は登場しないので、真偽のほどは分からないまま。折角主人公を呼び寄せたのに何も命じないでいいのかなー?
(8集でようやく新帝と高相再登場。どうやら主人公の活動報告は新帝に届いているらしい。功績は鮮やか、って話に。…そういえば現場に金吾衛が応援に来てたりしてたから、そこで察しろってことなのかな?)
ひたすらに重苦しく、暗い
妹の師父の死からの一連で、虎賁という組織が非情で残酷なことはよく分かる。が、そもそも虎賁がどんな組織なのか、目的は何か、何をしてきたのかはさっぱり分からない。15年の支配の間、他国と戦争している様子もないし、地方は(少なくとも淮南では)飢饉や貧困で人々が苦しんでいる、というわけでもなさそうだ。一度入ったら抜けられず、都中に眼を張り巡らせている、と語られるけれど秘密結社?
(8集で台詞があり暗衛であることが分かった。設立目的は不明のままだけど)
残酷さ、非情さで言えばその他の登場人物も負けてない。能力不足だからと言って呼び寄せた書生を切り捨てる新帝、逃げ出そうとして衝動的に下僕を殺害してしまう蕭文敬、仇の一人をあっさり刺し殺す妹…。沢山人が亡くなるのは武侠もの等でもおなじみではあるけれど、非常にやり口が残酷な割に誰もショックを受けたりしていないのが気になり始める。息を抜くような団欒場面もないので、これまでのところ全体に重苦しい空気が続く。
バランスを欠く展開?
主人公の復讐自体も“計略”は余り感じられず残酷さばかりが目立つ。
そもそも主人公のターゲットは6人。
・蒲逆川 乾盛19年に見捨てられ消息不明
・言風山 虎賁の総領 言皇帝と呼ばれていた
・青衣 監察/情報担当 朝廷の大臣の秘密を握っている
・劉子言 虎賁第一の殺し屋 叔父
・衛千庭 南葦溝に埋まってる
・謎の男 (フードで顔がわからない)
(ここから先は敵の生死について触れています。知りたくない方は2枚目の写真まで飛ばしてください)
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「埋まっている」人の生死ついては7話で判明。「説英雄誰是英雄」の関七と同様の目にあっていた(本当に埋まってた)。ただ、関七には「生かしておきたい理由」と「閉じ込めなければならない理由」がはっきりしていたのに対し、こちらは懲罰としての意味しかない。挙句のあれは…そこまでやらなくても、と思わざるを得なかった。
情報担当のはずの青衣はあっさりやられるし(8集になって捕えられたことが判明。死んだんじゃなかったの?)、叔父の劉子言もあそこまで兄を憎んでいた(殺し屋にしてはあるまじき殺し方で憎んでいたとしか見えない)理由が分からない。
そもそも全体の1/4までに6人のうち4人、始末がついちゃっていいんだろうか?
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「二十四」計?
「二十四計」と銘打った割に計略もぼんやりしている。「風起隴西」では各話のタイトルが兵法三十六計の計略名で(しかもちゃんと実行される)、分かりやすかった。
何かヒントがないかと思って微博も探してみたけれど「金蝉脱壳(蝉が脱皮するように人知れず姿を消す)」しか載ってなかった。…ほんとに24個あるのかなあ。
それとも「二十四」は二十四節気のことなのかな?
というのも少なくとも最初の二集には節気名が表示されていたからだ。ドラマの中での経過時間は説明もないので分からないが、主人公らの衣装はころころ変わる。だんだん薄着になっているので、季節は進んでいるんだろう。節気を代表する“物”や“イベント”で観る人がみれば分かるのかもしれないけど、その辺りの知識のない自分にはさっぱり分からない(泣)。
全ての原因は“説明不足”?
主人公に同情できず、残酷に見えてしまうのは主人公(の父親)側の事情も、仇側の事情も分からないからだ。
「一族の仇を討つ」ことが物語の中心になっているドラマは沢山ある。金字塔「琅琊榜」は勿論のこと、最近では「蔵海伝」も基本構造は同じ。ただ、これらの物語では自分の父親や一族がどんなに無辜で善人だったか、仇側がどれほど卑怯な裏切り方をしたのか、は丁寧に描かれた(「琅琊榜」の場合事件の真相は中々明らかにならないが、皇帝が語ることを禁じていることで逆に被害者の悲劇が強調される)。
8話に至って主人公の父親の墓が見つかり(15年前に飼っていた犬が突然現れて…というエピソードには苦笑いしてしまう)市井の人々が将軍の悼んで墓を作ってくれたことだけは分かった。…それだけ?
もやもやの原因の大半はやっぱり「説明不足」に集約される気がする。計略にしても季節にしても設定にしても、明らかに説明が足りていない。
このドラマは原作なしのオリジナル作品だ。但し脚本家の数が5人と多い。脚本が迷走した可能性もありそう。これだけ俳優さんを揃えて全28集しかない、というのも少々気になる点。もしかすると編集時点で大量にカットされたのかも、とも思う。
残り3/4で起死回生はある?
主人公が絶対に仇を討たないといけない人物は虎賁のトップである言風山と謎のフードの男。主人公を新帝に推挙した人物もフードを被っていたけど同一人物?
それから虎賁に囚われている王劲松さん(役名が未だに不明)の役回りも謎のまま。
加えて8集からは車椅子の将軍・顧玉(叶祖新 飾)の事件が展開し、主人公側・虎賁側にも新たな登場人物が。
権謀術数を中心に据えたドラマなので、とりあえず成毅の美しい剣技が見られればいい、というわけにもいかない。考え込んでいるか、敵と対峙して睨みつけているかだけでは、成毅の魅力全開というわけにもいかない。…でもあと3/4もあるわけだし(笑)。
今の処ひたすら復讐のことだけ考えてるらしい主人公と、それを諫める年長者の台詞があるだけだけど、転機はいずれ来そうではある。…面白くなるかなあ、なるといいなあ。
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題名:长安二十四计 The Vendetta of An 28集
編劇:霜城(总)、莫雨聪、李雪彤、王骢、虞筱霏
導演:林峰「赴山海」李磊「鬼吹灯」シリーズ
出演:成毅 Cheng Yi 刘奕君 王劲松 周奇「蔵海伝」 佟梦实Tong Meng Shi「慶余年」