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記憶の中の香港映画18:「臥虎蔵龍(邦題:グリーン・ディスティニー)」と選択の自由

観たいドラマは多いんだけど、最近武侠成分が足りない。こんな時は映画で補給だ!と思い至ってあれこれ考えてこの作品を観ることに落ち着いた。ただ、中身全然覚えてないんだよなー。

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豆瓣より 「臥虎蔵龍」アメリカ版ポスター アメリカ西部にいるみたい…

世界的ヒットを記録した“武侠映画”

興行収入2億ドル越え、アカデミー賞4部門を獲得した作品だ(香港金像奨、台湾金馬奨では最終週作品賞受賞)。監督は台湾出身でハリウッドで活躍する李安(アン・リー)。

周潤發Chow Yun Fat(香港)、楊紫瓊Michelle Yeoh(マレーシア)、章子怡Zhang Ziyi(中国)、張震Chang Chen(台湾)という国際的スターを揃えた本格武侠映画…なんだけど、個々のシーンは覚えていても全体のストーリーをさっぱり覚えていない。そもそも観た時に武侠映画、とも思わなかった記憶。…なんでだろう?

 

今回見返してみて、理由が分かった気がする。

確かにソードアクションシーンはいろいろある。些か長い軽功の追いかけっこから始まり、次々得物を変えての対決シーン、軽功で湖面を渡ったり、宿やお店を半壊するようなお約束の大立ち回りもある。竹林でのアクションは「侠女」へのオマージュかな、とも思う。流石に撮影は大変美しく、広々とした砂漠やさざめく竹の描写等印象に残るシーンも多い。

ただ、物語に武侠的要素は少ない。もちろん「師父と弟子」という関係は登場するけれど恒久的なものではなく、主人公の少女は善悪や正義の概念も薄い。この物語のテーマは武侠ではないからだ。

 

「選択の自由」についての物語

クレジットは周潤發らが上に来ているけれど、映画の主人公は章子怡扮する玉嬌龍だ。彼女は名家のお嬢様だけれど、密かに犯罪者である碧眼狐狸(鄭佩佩 飾/往年の武侠映画の大スターだ)を匿い、彼女が李慕白(周潤發 飾)の師父から盗んだ秘術書を読んでマスターしてしまう。彼女の夢は“物語の英雄のように生きること”。結婚を数日後に控えた夜、彼女は実家にある宝剣「青冥剣(この剣が邦題でもあるグリーン・ディスティニー)」を盗んで出奔しようとする。この剣は元々李慕白が江湖を引退するつもりで玉家に預けたもので、李慕白と、彼の旧知の女侠・俞秀蓮(楊紫瓊 飾)が剣の行方を追うことに。

 

玉嬌龍は恵まれた女性だ。俞秀蓮が手に入れられなかった「結婚」「家庭」で安定した暮らしを送ることができる(親の決めた相手だけど)。剣の腕を見込まれ、伝説の達人・李慕白の弟子になることもできる(厳しい戒律が待ってそうだけど)。師父である碧眼狐狸と共に江湖で名を馳せることもできる(殺人もする盗賊だけど)。草原から彼女を追いかけてきた羅小虎(張震 飾)と駆け落ちすることもできる(匪賊だけど)。

昔この映画を観た時に、なんて我儘な主人公だろう、と思ったことを思い出した。どれでも好きに選べるのに、出奔してただ暴れるなんて理解できない。

 

今見てみると、少し違う。選択肢はあっても、どれも他人から与えられるもの、他人に従うものばかりだ。自分が勝ち取った選択ではないから彼女は苛立ち、そこから逃げ出そうとする。

こんなことを考えたのは、少し前に「異人之下之決戦碧遊村」を見直していたからだ。あのドラマも一つの中心になるのは主人公・陳朵の「選択」だ。周囲の人々は彼女に様々な選択肢を“与えて”くれるが、彼女がどうしたいかは、誰も訊かなかった。「選択肢はあるけれど、自ら選んだものではない」というのは、選択肢がないのと同じくらい悲劇的なのかもしれない。

 

原作とはずいぶん違うみたい

この映画の原作は王度庐の同名小説。百度百科にあらすじが載っていたので読んでみたら、映画とはだいぶ違う。

羅小虎が玉嬌龍の結婚行列に乱入するまでほぼは同じだが、羅小虎がその場で彼女との過去を暴露したことで結婚は破談。結婚した後に逃げ出して一人で江湖を放浪するつもりだった玉嬌龍は怒り、二人は破局する。玉嬌龍は再び青冥剣を盗み出し、剣の力を用いて江湖で悪行三昧の生活を送る。李慕白は何度も諫めるが彼女は聞き入れなかった。

母が危篤との報を受け玉嬌龍は北京に戻るが捉えられ、夫に服従する旨の誓約書に署名させられる。羅小虎は彼女を助け出すが、玉嬌龍の母は亡くなり父も職を辞して故郷に帰ることになり、栄華を誇った玉家は一夜にして没落する。

 

その後は大体同じなんだけれど、あらすじからは玉嬌龍が剣(というか剣がもたらす力)に溺れ、振り回されている印象を受ける。青冥剣は正に妖刀(じゃなくて妖剣)のように彼女を惹きつけ、彼女自身の人生も彼女の家も破滅させてしまう。エンドは同じように玉嬌龍が何処かへ旅立つのだけれど、あらすじを読む限り何処にも行き場のなくなった彼女が剣と共に自らを葬るような印象だ。

 

どちらがいいか、というのは好みの問題だけれど、自由に向かって果敢にダイブする映画の方がすっきりしていて個人的には好み。

豆瓣より 「臥虎藏龍:青冥寶劍」香港版ポスター 武侠っぽい!

実は続編も存在する

この映画が作られてから16年も後に続編も作られた。「臥虎藏龍:青冥寶劍(邦題:Crouching Tiger Hidden Dragon: ソード・オブ・デスティニー)」がそれで、こちらは女侠・俞秀蓮が主人公。俞秀蓮役は前作から続投の楊紫瓊。

玉家に戻っていた青冥剣が再び悪の組織から狙われる。剣を守るべく集まった義士の中には死んだと思われていた俞秀蓮の婚約者・孤狼(甄子丹 飾)が含まれていた…。

武侠ものの王道「決死隊」任務もの。茶店で各々がカッコよく名乗りを上げるのがサイコー(笑)。

 

監督は前作の武術指導を担当した袁和平に変更になった。原作はやはり王度庐の「鉄-鶴五部作(臥虎蔵龍を含む連作)」の最終作「鉄騎銀瓶」。物語に登場する若者は原作では前作のヒロインである玉嬌龍と羅小虎の子どもだが、映画では関係のない人物に設定されている(羅小虎の出番もなくなった)。

武侠アクション映画としてはこちらの方がシンプルな分、気分良く見られる。

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題名:卧虎藏龙 Crouching Tiger, Hidden Dragon

   2000年  台湾・中国・香港・アメリカ合作

原作:王度庐「臥虎藏龍」

編劇:    王蕙玲 蔡國榮      John Fusco

導演:李安

出演:    周潤發 Chow Yun-Fat 楊紫瓊Michelle Yeoh

章子怡 Zhang Ziyi 張震Chang Chen

 

題名:卧虎藏龙:青冥宝剑 Crouching Tiger, Hidden Dragon: Sword of Destiny 

2016年 中国・アメリカ合作

原作:王度庐「鉄騎銀瓶」

編劇:John Fusco

導演:袁和平

出演:甄子丹 Donnie Yen 楊紫瓊 岑勇康Harry Shum, Jr.

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