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「披荊斬棘」(~最終集)119日に渡る長い旅路

10/25、大結局を迎えた「披荊斬棘」。大変面白かったです。

アメリカンアイドルのようなオーディション番組とは一味違い、技量のある人たちが切磋琢磨する様は見応えがあり、およそ4ケ月の彼らの努力が偲ばれて思わずもらい泣き。

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[披荊斬棘]微博より 舞台「送你一朵小紅花」集合写真 淘汰されたメンバーも参加

拘束期間4ケ月とは思わなかった

出演者は合宿所で暮らしている設定だけれど、まさか本当に119日間も合宿生活しているとは思わなかった。勿論仕事の都合で抜けたりはしているようなんだけれど、中秋も帰ってなかったし海外組はずっと合宿所にいたようだ。

そもそも30人以上の芸能人を4ケ月拘束するだけでも大事だし、合宿の間はどうやらマネージャーやスタッフもつかないようだし…。よくこの条件で仕事を受けるなあ、と思うけれど、本人にとってもそれだけ番組に参加する意義があるってことなんだろう。

 

拘束期間の長さに驚く一方で納得もした。舞台は一つ一つきちんと世界観が設定されセットも大掛かりなので一体どれくらいの日数で作っているのか、ずっと気になっていた。119日で6回の公演なので、1公演につき20日程度の時間があったことになる。それでもグループと曲決めからだから短期間には違いないけれど。

キャストのオンライン面接(ちゃんと本人の参加意思や希望を確認している)も年初からしていたようだし、時間と労力をかけて丁寧に作られた番組だと改めて思う。

 

出演者の国際化は最も成功

今年の中国の音楽系バラエティは「国際化」がテーマみたいだ。何故だかは知らないけれど「歌手2024」も「我們的歌第6季」も海外からゲストを招いて歌わせていた。ただ番組進行が全て中国語だし、中国語の分からないゲストはスタジオでリアクションもできず居心地も悪そうで、気の毒に思えてしまうことが多々あった。

 

国際交流、という意味ではこの番組が一番成功していたように思う。今回、中国以外の参加者は多かった。高卿尘(Konchit Boonsatheepakdee←タイ語だと名前はこんな)はタイから、一番年少の庆怜(Caelan Alexander Moriarty)はアメリカ(ハワイ)からの参加だし、凤小岳(Rhydian Vaughan)は英国籍(活動の中心は台湾)、最終回でもリーダーを務めていた尤长靖Yu Chang Chinの国籍はマレーシアだ。

 

日本からはAKIRAとMIYAVIが参加。彼ら以外は全員中国語を解するが、この二人は中国語を喋れなかった…のだけれど、MIYAVIの場合は英語のできる庆怜と凤小岳辺りが通訳を買って出て、AKIRAの場合は翻訳ソフトを駆使してコミュニケーションを確立していた。二人とも中国語の歌唱もこなし、周囲に溶け込んでいた。

MIYAVIは練習帰りのバスの中で「最初来た時はどうしようかと思ったけど、今ではここが家に思える(大意)」と語ってみんなを感動させていた。

披荊斬棘」微博より舞台「隐隐作秀」 セットも衣装もオペラやミュージカルと同じくらい本格的

最終回、4グループの舞台は…

グループ分けは公演の度に分解と統合を繰り返すのでいろいろ変化があったけれど最終的には以下の4つのグループになった。最後に歌った歌はどのグループも一周回って「音楽の楽しさ」の原点に戻って感動的だった。

 

一見鍾勤(リーダー:李克勤Lee Hacken)黑泽良平 秦昊 付辛博 黄潇 胡夏 井胧

李克勤がリーダーで歌と踊りの専門家がおり、一番パフォーマンスが安定。最後に歌った「紅日」は「それが大事」の広東語バージョン。作詞が李克勤本人だとは知らなかった。

李克勤とAKIRAはやっぱり「蘭亭序」が一番良かった。

胡夏Hu Xiaと付辛博Fu Xinboはこのグループになってからは目立たなくなった気が。自身がリーダーだった「血腥愛情故事」のパフォーマンスが一番かなあ。

普段はけたたましく笑う兄ちゃんだけれど、黄潇は居るとステージの質が一段二段上がる人。本人の舞踏はもちろんのこと、振付師でもあるので他人への指導も上手い。

どのステージも良かったけどドラマティックだったのは「国王与乞丐」。王铮亮と胡夏がデュエットする豪華版で黄潇の素晴らしい舞踏とメフィストフェレスな徐海乔さんが堪能できる。素敵。

 

点亮夜空(リーダー:王铮亮Reno Wang)韦礼安 林依轮 蔡旻佑 严屹宽 高卿尘

年齢層高めなグループ。王铮亮のいるグループの曲はいつもアレンジが凝っていて、挿入される外国曲が元曲の世界観をより一層広げてくれる。最後の曲「想着你」は全員が楽器を奏でながらのパフォーマンス。「You Rise Me Up」の旋律が混ざる辺りで高卿尘が泣き始めてしまって他の人も涙ぐんでいて、歌詞も相まってとても感動的だった。

 

とにかく王铮亮は歌が上手い。この番組には他にも上手な歌手が何人もいるけれど頭抜けて上手いと思う。おまけに編曲も手掛け、アコーディオンやピアノも弾く。才人だ。ただの「時間都去哪兒了」のおじさんだと思っててごめんなさい。

王铮亮とハモることの多かった高卿尘も綺麗な声。いつもアイドルらしい佇まいを崩さない人だけれど、最後のパフォーマンスでの涙を見ると、やっぱりいろいろ思うところがあって参加したんだろうなあ。

蔡旻佑Tsai Min Yuは「ちょっとヴァイオリンが弾ける」と言っていたけど台湾の大学でヴァイオリン専攻だったそうで、本格的。この辺りの音楽性の高さがグループのパフォーマンスの水準を押し上げている気がする。

 

六星宝可萌(リーダー:尤长靖)雅 杜海涛 凤小岳 庆怜 早安

尤长靖と「太陽」の朱星杰J.zenはアイドルグループ育成番組「偶像練習生」の出身。尤长靖は最終選考に残りアイドルグループ「NINE PERCENT」のメンバーになった(同じグループには王琳凯や范冰冰の弟范丞丞がいた)。如何にもアイドル然とした風貌だけれど努力家らしく一日16時間も練習していたことがあって「一番練習した人」賞をもらっていた。

早安は最終グループ決めの時にできれば歌の先輩のいるグループに行きたかったようだけれど叶わなかった。でも尤长靖と歌った「作為怪物」は出色の出来だったと思う。

MIYAVIはこのグループの精神的支柱と言ってよく、ギター以外に中国の歌にもダンスにも挑戦。最終回の舞台「闘牛」では花嫁のヴェールのような長い真っ白なマントを纏って登場した。若い出演者からの支持は絶大で、カッコいいポーズを決めるたびに若い出演者から「好帅!!!」と黄色い声援が飛んでいた。

 

太陽(リーダー:石凯Shi Kai)梁龙 焦迈奇 李佳琦 朱星杰 徐海乔 符龙飞

最終回の「隐隐作秀」まで一度も一位がなかった「太阳」グループ。でもこの一位はメフィストフェレス的な役が滅茶似合う徐海乔兄さんのおかげ。

 

スタッフとの面接時から「共演したい人は梁龙」と言っていた石凯。「黑白芸術家」での共演は本望だったろう。ただ石凯自身のパフォーマンスでは「河流」「這条小魚在乎」のようなよりアイドルっぽいスローナンバーの方が良かった印象。「這条小魚在乎」は派手な仕掛けはないけれど、とてもいい舞台だった。

このグループで特筆すべきはやっぱり徐海乔Xu Haiqiao。「夢華録」や「蒼蘭訣」の時はこんなに“帅”とは思わなかった。「国王与乞丐」や「隐隐作秀」での悪魔から「負重一万斤長大」の舞踏まで、何をやっても美しい。…うーん、知らなかった。

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番組のラストでは、途中で淘汰された人や司会の齐思钧も含め全員で「送你一朵小紅花」を歌った。観客が掲げる赤い花越しの舞台はとても美しかった。

 

この番組のエンドロールはものすごく長い。ディレクターもADの数も半端なく多い。それだけ作業量が多かったということだ。あれだけの数の舞台を作る為には美術や照明、衣装メイクのスタッフもさぞ大変だっただろう。

でもその苦労に見合うとても良い番組だったと思う。大結局まで観終わったのに「舞台純享版」を繰り返してみてしまうくらい。「披荊斬棘舞台純享版」はパフォーマンス部分だけを抜き出し再編集したもので、ちょっと番組を覗いてみたい人に最適。

沢山の素晴らしいアーティスト、沢山の良い歌を知ることができて、とても楽しかった。

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題名:披荆斩棘 披荊斬棘 Call Me By Fire

総導演:吴梦知

音楽総監:陈伟伦

舞踏総監:陈龙生@天舞IDG

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