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毛不易「東北民謡」の話

「春晩」の小型版といった趣でそれ程面白いとは言えないCCTV「中秋晩会」を観たのは毛不易が单依纯と「東北民謡」を歌うと知ったからだ。

この曲、大好きなのでちょっと紹介したい。気に入ったら一度聞いてみてほしい。(SpotifyでもYouTubeでも聴けます。)

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「CCTV4」微博より セットの印象もこんな感じ

どんな曲?

「東北民謡」は毛不易のセカンドアルバム「小王」に収められている曲だ。

嗩吶(さない・所謂チャルメラ)の独奏が印象的な曲で、美しい歌詞と中国の民謡に近い抒情的なメロディーを持つ。(本来のイントロはギターソロからなのだが、他の歌手が歌う場合のアレンジは大抵嗩吶のソロから始まる)

 

歌詞の内容は東北の村で起きた少女の悲恋物語だ。歌詞を載せたいところだけれど著作権の問題があるので、興味があれば捜してもらえると嬉しい。

 

最初に語られるのは少年が真夜中、雪道に馬車を走らせる情景。続いて一面の爆竹の赤と花灯に彩られた村の旧正月の情景、そしてその中で一人戻らぬ婚約者を待つ少女…と物語が綴られていく。

歌詞には東北の雪の白さと、対照的に鮮やかな爆竹や夕陽の赤が読み込まれていて非常に美しい。

恐らく少女の恋人は村へ戻る途中冷たい河に落ちて亡くなり、少女が一生待つと誓っているのにもかかわらず二度と帰って来ないだろうということは、歌の最後に何となく察することができる。

 

この曲を知ったのは毛不易自身の歌唱ではなく刘宇宁の直播だった。毛不易の淡々と情景を積み重ねていく歌い方も美しいけれど、刘宇宁の如何にも民謡っぽく(こぶし回しまくりだ)切々と歌い上げる歌い方がとても好きだ。

 

今回の「中秋晩会」でのデュエットは(歌詞がそもそも男女の悲恋物語だし)とても美しかったけれど、歌詞の中で一番好きな「山の夕陽が彼女の花嫁衣装となり、古松が彼女の供をする…」の部分がまるっとカットされていてちょっと悲しかった。

 

初出は愛奇芸「我是唱作人第一季」

この曲はシンガーソングライターばかりを集めた歌番組「我是唱作人第一季」で発表された。番組は未発表の自曲を持ち寄って披露し、観客の判断で勝ち負けを決める、というもので、この曲は毛不易が番組内で披露した最初の曲だった。

 

もともと看護師のインターン時代に作った古い曲でファーストアルバムに入れようとして最終的に没にしたらしい。その後番組に出るにあたって比較的自信のあるこの曲を選んだ、とは本人の弁。

 

ところで毛不易Mao Buyiって誰?

簡単にプロフィールを紹介すると、

1994年黒竜江省チチハル生まれ。看護師大学卒業という少々変わった経歴の持ち主で、2017年オーディション番組「明日之子第一季」で鮮烈なデビューを果たす。

 

実際「明日之子第一季」を観たのだけれど、歌う前は白酒を密かに持ち込んで飲み干してしまうくらい緊張していたのに、歌い始めると審査員が驚くほど完成度の高い曲を披露した。

この時歌ったのは「感覚自己是巨星」「消愁」「像我這樣的人」等後に彼の代表曲と言われるものばかりで、最終的に優勝を遂げた。

 

アルバムに収録する曲は基本自身の作詞・作曲だけれど、歌も大変巧いのでOSTも沢山歌っている(OSTは他人の作詞作曲が殆ど)。

「香蜜沉沉烬如霜(邦題:霜花の姫~香蜜が咲かせし愛)」のテーマ曲「不染」、「如懿伝」のエンド曲「梅香如故」(周深とのデュエット)、「長月燼明」のエンド曲「黒月光」、今日本でもOA中の「雲之羽」の挿入歌「山月不眠」辺りが有名だろうか。

中国ドラマがお好きな方なら毛不易の歌声を一度くらいは耳にしたことがあるのではないかと思う。

 

私が初めて毛不易の名前を認識したのは「以家人的名(邦題:家族の名において)」の「我會守在這里」だった。「子ども達、おやすみ 自分はここで待っているから」という歌詞は登場するお父さんの心情そのままで実に優しく響く曲だ。

 

TV番組(or配信)にはたまに出演していて、最近では「我們的歌第6季」で刘宇宁、大張偉と周華健の名曲「花心(原曲は喜納昌吉の「花」)」を歌っていた。ものすごく寡黙なくせに口を開くと毒舌、というイメージの強かった毛不易も最近は少し丸くなった印象だ。

 

单依纯って誰?

ついでに单依纯Shan Yichunについてもざっくり紹介を。2001年浙江省東陽市(時代劇ファンにはおなじみの横店がある処だ)生まれ。浙江省音楽学院時代に出演した「中国好声音2020」(浙江電視製作の音楽番組)で優勝し、歌手デビュー。

 

最初に見かけたのは2021年「我們的歌第三季」の新人歌手枠だったけれど、その後順調にキャリアを積み上げ今年の「春晩」にも出演、現在「不如見一面」「純妹妹」がヒット中、歌番組「音楽縁計画」に出演中、というライジングスターだ。

個人的にはドラマ「星漢燦燗(せいかんさんらん)」の同名エンド曲が好きで(というよりあのドラマのOPとENDがものすごく好きで)よく聴いていた。

 

「中秋晩会」について一言

「東北民謡」聴きたさに観始めた「中秋晩会」、結局最後まで観てしまったのだけれど…。

 

CCTVだけにセットはすごかった。何でも中国の文化財(絵画)をAIで再現する、というコンセプトだったらしく、舞台上に庭園(楼閣やら亭やらが本当に建っている)がしつらえられ、プロジェクションマッピングで情景が描かれる。舞台前面には水が張られ、舞台がそのまま映るようになっていて「月見」の夜にふさわしい美しさだ。

 

まあ中国のTV局の常として歌手の他に群舞の一団がおり、更に歌っている最中にも空中に花火が打ち上げられたりして、目まぐるしいことこの上ない。綺麗な舞台なんだから、もう少しゆっくり見せてくれていいんだけど。出演者の衣装も「中国の伝統衣装と現代の美意識の融合」ということだったらしいけれど、こちらはよく分からなかった。

 

最近の中国の歌番組は「国際化」がキーワードのようだ。「中秋晩会」にはBalazs Havasiというハンガリーのピアニストと「理査徳・克莱徳曼」が参加。字だけじゃわからないけれど、リチャード・クレイダーマン。歳取ったなあ。

 

番組後半は周深が2曲。一曲はクレイダーマンの伴奏で「梁祝」、マカオの少年少女合唱団と「向光而行」。やっぱり周深は別格のようだ。

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番組名:2024年 中秋晩会

曲名:東北民謡 东北民谣 詞曲:毛不易

歌唱:毛不易 单依纯 

 

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