「凡人修仙伝」終盤は目まぐるしい戦闘の連続で、あっという間に観終えてしまった。
CGの出来、後半ちょっと単調になりがちだった戦闘はいろいろ意見がありそうだけれど、面白かったのは確か。ただ観終わってからよく考えると、このお話は他の所謂「仙侠」ものとは少し違っている。その辺を考えてみた。
ここから先はドラマラストまでのネタバレが含まれます。ご注意ください。
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とりあえず後半のお話
後半は修行、というより闘いの連続。
鬼霊門の少主・王蝉(汪铎 飾)に取り込まれた燕家の婚礼での虐殺に始まる魔道との闘いは激化の一途を辿る。…けれどこの戦い、上の方では既に話がついており、下位の弟子たちがある程度犠牲になったところで手打ちになるとか(非道い)。一方韓立(杨洋 飾)は師父の頼みで下界の秦家の様子を見に行き、魔道の力を借りて「不死」を得ようとする者たちと対峙する。
そうしている間にも正派は魔道に圧され、黄楓谷も崩壊の危機に直面。燕家の一件で王蝉の怨みを買った韓立はどうなる!?
反派のはずの鬼霊門の人達がコミカルでむしろ癒し。やっていることは極悪非道なんだけど、ちょっと間抜けなところのある少主、こっそり文句を言っている部下が可愛い(笑)。
韓立は戦いの合間にもゲットした法器や書物の研究に余念がないらしく、どんどん強くなっている。でも修行の段階はまだ「築基」。仙人としてはまだまだ駆け出しで、故に上の人達(どのくらい上なのかは分からない)にとっては消耗品らしい。
仙人になる為の段階って?
これが分からないと話が分からないところがあるので、AIさんに聞いてみた。
仙人の修行の段階は下から順に
①練気
修行の最初期。気を練って巡らせ高める。最初の師父、墨大夫の処で始めた修行はこれ。「凡人修仙伝」の世界ではこの段階でも法器や呪符があればある程度の術は使えるらしい。
②築基
練気で得た気を固め定着させる段階。この段階への早道になる薬を作る為、韓立は禁地へ入る決心をする。現在の韓立や師兄たちはこの段階。築基中には更に細かくレベルがあるようだ。
③結丹
気を更に練り上げると金丹が形成される。韓立の師父・李化元たちはこの段階。
④元嬰
気を更に練ると元神が形を成し元嬰になる。仮に肉体を失くしても意識が元嬰に宿る。元嬰が完成すると意識が肉体を離れて活動できるように(出窍)。董萱儿のお父さん、雲露(徐海乔 飾)は元嬰の中期だそうで、恐ろしく強い。
⑤化神 仙人の完成形。
分け方はいろいろあるようだけど、大体こんな感じ。ドラマに登場する修仙者たちの、仙人への道のりはまだまだ遠い。
人間関係に淡白な主人公
主人公・韓立は誰ともつるまない。殆ど一人で行動する。この辺りが普通の仙侠ものとちょっと違うな、と思う点。
最初こそ同郷の友と共に墨大夫の弟子となるけれど、友は早々に傀儡にされてしまう。最初の頃は実家に仕送りもしていたようだけれど帰郷することはなく、妹のことをたまに思い出す程度。
黄楓谷に入って李化元の弟子となった後も兄弟弟子と共に行動しようとはしない。自分の修行場所である洞の位置さえ教えるのは嫌そうだし、燕家のあれやこれやの後は董萱儿を送りもせず雲隠れしてしまう。
女性に対しても同様で同門の師姐・陳巧倩(赵小棠 飾/かなりねっとりとした役で、韓立が逃げ腰なのも分かる)にも肌を合わせた南宫婉(金晨 飾/メインヒロインなのだが、今の処南宫婉→韓立)にも「面倒」と思うばかりで何の感情も持たない。唯一気にかけるのは妹を思い出させる一般人の墨彩環(赵晴 飾)だけだが、彼女の想いにも応えようとはしない。
普通の仙侠ものならある派閥に入ったら同期の弟子とライバル関係になったり、一緒に修行の旅に出たりする。グループには女子もいてグループ交際から両想いに発展したりも定番だ。韓立にはそうした濃密な人間関係は存在しない。興味があるのは仙術の研究だけで、友となるのは有益そうな人間だけ。巻き込まれる形で仕方なく事件に関わる、というのが韓立のスタンスだ。
「家」のしがらみから逃れられない修仙者たち
他の修仙者はどうだろう?
市井の人々は修仙者と分かれば「仙人」と崇めるような世界で、他の修仙者たちは家を離れても家に縛られている。修仙者の殆どは名家の子弟だ。修仙者を出す、ということは一般人にはない素質を持っている証明で、家の格を示すことに他ならない。修仙者になることも家の意思であり、場合によっては陳巧倩のように、修仙者として山に上ったにもかかわらず家の都合で嫁がされる。
「年をとると捨て去れないものが多くなる」と言って愛する師姉・红拂(柳岩 飾)や弟子たちの為に命を散らす師父・李化元(李乃文 飾)に韓立は問いかける。「捨て去れないものって何?」
ところが修仙者も年長(師父らより大分年を取っている)になると反応が違う。彼らにとっては家どころか疑似家族である宗派の弟子も「関係ない」と切り捨てる対象だ。
仙人の修行は「世俗を切り捨てる」とことだとは聞いていたけれど、友人・血脈全てを切り捨てることだとは思っていなかったので、驚いた。
下位の修仙者から見れば些か奇異に見える韓立は、そういう意味では仙人に向いているのかもしれない。
家族の繋がりはむしろ「魔道」にある
不思議なことに家、家族の繋がりは寧ろ魔道の方で強調される。鬼霊門内で争っているのは実の叔母(とその夫)と甥だし、魔道・合歓宗の老祖・雲露は娘の董萱儿を有無を言わせず弟子にする。そうかといって家族仲がいいわけではない。むしろ既に崩壊している「家」をかろうじて「血脈」で繋ぎとめている、そんな感じ。
下界の世界でも家は崩壊する一方だ。魔道に絡めとられた燕家や秦家はもとより、明るく楽しげだった墨大夫の家は一家皆殺し、齐云霄の家も三回目に訪れた時には主は亡くなり嫁も瀕死の状態に。仙術や修行にうかつに手を出した凡人の家にはもれなく不幸が襲い掛かるかのようだ。
「家」が象徴する世俗全てのしがらみから自由になりたい。そう願う者は血族も友人も斬り捨てなければならない。それが仙界の掟、ということなんだろうか?それとも韓立は旅の果てに「どうしても切り捨てられない」何かを見つけることになるのだろうか?
アクションについて一言
仙侠ものなので基本術の応酬なのだけれど、皆さん、空中での姿勢がとても美しい。特に杨洋。空中で力を込めて剣を振るったり、飛ぶ姿勢を保ったりするのにはものすごく筋力が要りそうだ(微博に動画がUPされているけど、杨洋もベテランさんたちも縦にくるくる、横にくるくる、と大変)。中国の役者さんが日ごろからバリバリに身体を鍛えているのはこういう時の為なんだろう。
空中に八卦陣が広がるのは個人的に好きなのでOK、獣人はまあ…。でも空中で長い袖が翻るのはとても綺麗でそれだけでも楽しい。
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ラストに「第一季完」と出たので、第二季を作るつもりはありそうだ。
転送陣で行きついたのは異世界である乱星海、ここから新たな冒険が始まる模様。
新しい世界がどんな姿をしているのか、全然分からないけれど美しいところだといいなあ。真っ白なスモークに白い建物…みたいなのは見飽きたのでちょっと…。
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題名:凡人修仙人伝 凡人修仙传 The Immortal Ascension 30集
原作:忘语「凡人修仙伝」
編劇:王裕仁「夢華録」「不完美受害人」贾东岩「猎罪图鉴」
導演: 杨阳「不完美受害人」「将夜」「夢華録」
出演:杨洋Yang Yang 金晨Jing Chen 汪铎Wang Duo 赵小棠Zhao Xiaotang