lienhua’s Dragon Inn 龍門客棧

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ケレン味が楽しい「雲之羽」

ストーリー及びラストに触れています。ご注意ください。

「雲之羽」微博より 雪重子、可愛い上によく動く

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いつか分からない時代、山奥で対立する二つの門派。一つの門派の郷は毒霧に包まれ秘術を隠し持ち、郷の裏には更に後山が。もう一つの門派は秘術を狙って女ばかりの暗殺者集団を養成、郷に送り込もうと画策する…。

 

舞台設定だけでもケレン味たっぷり。最初からナイトシーンが多く、霧と相まって陰惨で重苦しい雰囲気で始まるドラマだけれど、テンポは速く、謎が謎を呼ぶ展開に目が離せない。

 

執刃(一門の長)の次男坊、宮子羽(張凌赫 飾)は武芸の腕も大したことない遊び人だけれど、父と兄が惨殺されたことにより、一気に執刃候補に。もう一人の執刃候補・宮尚角(丞磊 飾)としのぎを削ることに。

一方、秘術を狙う敵門派から花嫁候補に紛れて忍び込んだ暗殺者は雲為衫(虞書欣 飾)と上官淺(盧昱曉 飾)。

 

正派と邪派、隠れ里、秘術、秘伝の奥義(技を繰り出すとででーんと名前が出る。ダサい演出なんだけど、好き)、暗殺者と裏切り者。こういう話につきもののアイテムは全部揃っていて楽しい。

 

二転三転する物語

「雲之羽」はそもそも暗殺をもくろむ側と防ぐ側の物語なので、話の最後で騙す側と騙される側がまるっと入れ替わるような展開が続く。

同じ側だからと言って仲が良いわけでは決してなく、互いを騙したり、陥れたり。でも手を組まないといけない場面もそれぞれあって、立場が激しく入れ変わる。それに加え、かつて郷に送り込まれた暗殺者や、毒使いの宮尚角の弟、長老たちの思惑が絡む。

 

監督で原作者の郭敬明(いろいろあった後の復帰なのでテロップは顾晓声名義)、この人自体は好き嫌いが分かれそうだとは思う。私も「幻城」は奇妙な西洋っぽさと白のベタ明かりが辛くて、何度トライしてもラストまでたどり着けない。でもあの時より、演出は格段に上手になっていると思うし、何より全体が短いのでダレない。

ストーリーも1つ一つのエピソードは正直どこかで見た気がするものも多い。ただ、組み合わせ方が上手いんだと思う。

主人公はどこか「くノ一」を思わせる雰囲気と装束で、それも好みだった。ちなみに黒地に金の主人公の衣装は映画「晴雅集」(「陰陽師 とこしえの夢」)の公主の衣装にそっくりだと思う。

 

つい次の話まで観たくなる「クリフハンガー」の巧さ

クリフハンガー」は主人公が危機的状況に陥って、視聴者の次回視聴意欲をそそる構成の手法だけれど、中国ドラマはえげつないくらいにこの手法を使う。

日本のドラマももちろんクリフハンガーは使うのだけれど、最終盤に新しい情報が追加され「あれ、まだ何かあるの?」と思わせるようなフックであることが殆ど。一週間の間に考察する材料を与えて、視聴のモチベを保たせるために使われ、中国ドラマの最後にまるまる状況がひっくり返ったりするのとは少し異なる。中国の場合は配信で2話一度に、とか毎日帯で放送、ということになるので、純粋に面白さを継続するようなクリフハンガーであることが多い。

中国ドラマの金字塔「瑯琊榜」では必ず最終盤に何等かの事件が起こり、どうなるか気になりすぎて止め時が分からなかった(笑)。

 

「雲之羽」の基本は女暗殺者の潜入ストーリーなのだけれど、彼女たちの台詞、特に身の上話は何処までが本当で何処からが嘘なのか分からない。ずっと前に潜入し、行方不明のままだった暗殺者も誰なのか、主人公の敵なのか味方なのか分からない。謎は解決したと思ったら次の謎が提示され、真相が見えてこない。ストーリーの進行が速いのと、一話が60分越えの長尺なので、視聴者が翻弄されるのには十分だと思う。ま、メインの男たちが割と簡単な色仕掛けに引っかかっちゃうのは、ここが孤立した山里だから仕方ない…。

 

虞書欣を見直した

もう一つこのドラマの魅力を挙げるとすれば、主人公雲為衫を演じた虞書欣の頑張りだろう。所謂「ぶりっ子」的な芝居が上手な虞书欣だけれど、今回はにこりともせず、睨んだ時の三白眼が怖い。それでいて男主の宮子羽の言葉に心動かされた時には微妙に表情が和らぐのだ。正直彼女のことをこんな演技ができる役者さんだと思っていなかったので、ホントごめんなさい、という感じ。アクションも気迫に満ちていて、大変かっこ良かった。

周りを固める俳優さんたちは若い人(綺麗なお兄さんたち)が多い。

皆しっかり芝居もアクションもこなしていて感心する。特に雪重子!子どもなのにすごくアクション頑張っていたし、何より可愛い。

サブカップルの物語も既視感はあるもののよく出来ていて、宮子羽の侍衛・金繁(孫晨竣 飾)と大小姐(金靖 飾)のカップルは重たい物語の中での癒しだった。案外いい人なんだ、大小姐

 

ラストは笑って許してあげたいかも

余りに「第2シーズンやりたいです」という制作側の意図が強すぎて視聴者の不評を買ったみたいだけれど、アメリカのドラマでも割とよくある、こういうの。で、第2シーズンが打ち切りだったりして「あれれ?」となる。ただ、回収されていない伏線や謎も多いことだし、できれば次のシーズンも作ってもらいたい。映画の「晴雅集」は続編(ポスターも作られてたし、予告編もあった。恐らく撮影まで終わっていたと思う)の予定があったにもかかわらず、一本目が公開中止になったために日の目を見なかった。…観たかったけれど、諸般の事情で無理だろう。

それを考えると、あの終わり方は「絶対に続編作るんだ!」という硬い意志の表れ?に見えないこともない…かも。

あ、あと曾舜晞は最後の最後になるまで登場しない。これも出る出る詐欺、だ。…こういうところさえなければなあ。

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原題:云之羽 My Journey to You 60分×24集 2022年

導演:顾晓声「晴雅集」 落落(联合导演) 

编剧:顾晓声(总编剧)、吴亮、吴骊珠、黎琼、刘麦加

虞书欣 Esther Yu Shuxin 张凌赫 zhāng líng hè 丞磊Ryan chéng lěi 卢昱晓 Yuxiao Lu

 

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