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人間の所業が怖い「二十一天」

ある日突然、訪れていたビルが崩れ、閉じ込められたら…。食料も水も足りない中、閉じ込められた十二人は無事脱出できるのか?

 

こんな風に始まる本作だけれど、所謂「サバイバルドラマ」ではない。人間の善性が欠けると本当に怖ろしい、という物語。

ここから先は、ストーリーのネタバレが含まれます。ご注意ください。

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「二十一天」微博より 出演者は地味目ですが面白い

 

倒壊したのは欠陥ビル?

舞台は周囲の施設に対抗する為増改築し、しかも3年前には火災も出しているビル。そりゃ倒壊もありそう…しかもビルの下の地面には大きな穴が開いており、倒壊したビルごとその穴に落ちてしまう。

 

この辺りの展開は韓国映画「奈落のマイホーム」を思わせる。あれもマンションごと穴に落ちちゃって大変だった。あちらは住民同士支え合い、なんとか生き抜く展開だったけれど…。

 

このドラマでは閉じ込められた人々同士が助け合い生き抜こうとする、なんてことはない。元消防士の青年がいるお陰で何とか秩序が保たれているけれど、閉じ込められた人々は過去にこのビルと因縁があったり、人に言えない秘密があったりするので、雰囲気は一触即発。

 

タイトルの「二十一天」は閉じ込められてから21日後のことで、(恐らくチリの)落盤事故の際食料などの供給ラインが通るまでの最大日数らしい。生存者たちは最悪その日数を生き延びなければならない、という前提で食料と水を分け合うことになる。

 

閉じ込められた12人

閉じ込められた12人は以下の人々。

役者さんは欧豪(「天意」「民初奇人伝」)と张雪迎(「白髪 邦題:白華の姫」)以外余り知らない人たちだけれど(駐車係は「沈黙的真相」黄毛役の韩朔)、リアルなお芝居で「こんな状況もあり得るかも…」と思わせてくれる。

 

男主:小光(欧豪 飾)・元消防士

このビルの3年前の火災で弟を失くす。弟の死の真相と火災原因を探るうちに、消防士を辞めることになったらしい。

女主:海美(张雪迎 飾)・学生

ビルのオーナー社長の娘の親友。小光とは以前から知り合い?

 

他に…

・ビルのオーナー社長の娘。両親は離婚しており父親との関係は複雑

・ビルの異変を社長に報告しようとしたビルのメンテナンス担当者

・地下のスーパーの女性客と、その息子

・地下のスーパーのレジ係の男性

・元弁護士の女性

・金持ちのボンボン

・駐車係の男

・ビルのオーナー社長

・ビルの重役の風水師

 

地上では…

・消防の救出部隊

・事故の背後関係を調べる刑事

・オーナー社長の元嫁×2 うち一人はオーナー会社の経理財務担当者

が登場。

この中の幾人かは3年前のビル改築→火災に関連している。

ドラマは各話の冒頭に救助後の物語が語られるため、閉じ込められた人々のうちの3人(でも彼らとは別の遺体もあったりするので終盤まで誰なのかは分からない)が亡くなっていることも、誰が助かったのかもある程度明確になる。

 

日にちが経つにつれて増す「疑心暗鬼」

ビルが倒壊した日は丁度三年前、火災が起きた日と同月同日。

三年前の火災とそれに先立つ自殺事件の関係者にはそれぞれ思惑があり、事態は複雑になる。サバイバルというより誰が誰をどうしようとしているのか、が序盤の焦点。

 

中盤になり、水と食料の不足が深刻になると疑心暗鬼が始まる。

普通のサバイバルものであれば、助け合う中で生まれる美しい絆が心を和ませてくれるものだが、全員が大なり小なり秘密を抱えていて、腹を割って話すことがないので信頼も友情も生まれない。

追い詰められた状況下では「もし救助されたら秘密をバラされる」という心理が「こいつだけは助からないでほしい」という心理に変わるのも早い。助かるかもしれない、という希望が大きくなるにつれ、殺意が増し、人間性が失われていく。

 

正しいことを言う者が逆に村八分にされるのは、サバイバルものでも見られる展開だけれど、ここまで孤立無援にされてしまうのは余り観たことがない。見る方は緊張感というより、理不尽な展開が何処まで続くのか、心配のし通しだ。

 

ここから先は最終盤で回収されない伏線について触れています。これから見ようという方の興を削ぐかも。ご注意ください。

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「二十一天」微博より 希望が生まれると狂気も増す

真相は最終話まで謎のまま

このドラマのヴィランはものすごく独善的で、徹頭徹尾自分のことしか考えていない。

食料と水を盾に脅す、暴力を強要するのは勿論、泣いて憐れみを誘ったり、嘘や隠ぺいで人を操る。極限状況下では、普通の人々はそれに巻き込まざるを得ない。ドラマの最後まで全く反省の色を見せないのは、徹底しているというか何と言うか。

その割に地下に死者を弔う部屋を作っていたりする辺り、犯人像が些かぶれているような気も…。

 

結局罪は明るみに出るのだけれど(一部の罪は隠されたまま)、ここまで真面目に観てきた視聴者としては若干の不満が残る。もう一つの可能性を考えさせる伏線が放棄されっぱなしで終わってしまうからだ。

 

海美が妊娠していた、という事実と小光の自室に残されていた海美との写真。その裏に書かれていたという遺書(文面は明らかにされない)。落盤事故が三年前の同日に起きているという事実…。

 

これらって全部ミスリードだったのか…?最終話で突然登場する心理医といい、何だか結末だけ脚本を変更したみたいに見えるのは気のせいだろうか。

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題名:二十一天 THE LIMBO

総合導演:曾大衡 導演:谢忠道 武洪武 編劇:孔优优 12集

出演:欧豪Oho Ou 张雪迎Sophie Zhang 王挺

 

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