韓国ポップスと違って中国の歌謡番組はまず日本では配信されないけれど、この番組だけは日本で配信されている。恐らく日本からMISIAが出ているからなのだろうけど、周深、毛不易、华晨宇等が出演していて聴き応えがあった。
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番組のシステム
「歌手」は2011年から2020年まで続いた老舗番組で「歌手·当打之年」は最終シーズンにあたる。単に歌を披露するのではなく、観客の投票で勝ち抜いてゆく勝ち抜き戦スタイルだ。
2019まではちょっとややこしいシステムだったけれど、今回は比較的シンプル。最初に登場する7名の歌手に挑戦者の奇襲歌手3名が1対1の奇襲を仕掛け、元々の出場歌手より多くの観客投票を得られれば、奇襲成功となる。
奇襲が成功した場合、全体から観客投票数の最も少なかった歌手が淘汰され、奇襲成功歌手と入れ替わる。(だから必ずしも奇襲歌手に敗れた歌手が敗退するわけではない)
聴衆に飽きられないためにステージは毎回工夫が必要、というのがミソで、各歌手ともセットや演出、曲のアレンジに至るまでかなり凝ったものを用意する。歌は自曲でも他人の曲でも選曲は自由、但し上下二週で1サイクルなので、1曲目と2曲目の雰囲気をどう変えるかも考えなければならない。
奇襲歌手は、ステージを見ていて自分が勝てる、と思った時点でボタンを押すことができる。歌手が歌い終わった直後にサイレンが鳴るので、歌手本人にも視聴者にとっても心臓に悪い。
出場歌手
出場歌手は奇襲歌手も含めるとかなり多い。MISIAの他、あんまり中国ポップスに詳しくはない私が知っている歌手はこんな感じ。
毛不易 Mao Buyi
この番組を観ようと思ったのは毛不易が出てたから。2017年の「明日之子」というオーディション番組で自作曲「消愁」を歌い、チャートでいきなり1位を飾り鮮烈なデビューを果たした。OSTも「不染」(「香蜜沉沉烬如霜」)「梅香如故」(「如懿传」)等沢山歌っている。
ただこの番組の毛不易はやる気が全然なさそう…順位が付く番組、好きじゃなさそうだ。
华晨宇 Hua Chenyu
アイドル発掘番組「快楽男声」でデビュー。作曲も手掛け「歌手2018」でも優勝した。ステージも華やかで、この番組でも他の歌手とは毛色の違ったパフォーマンスを披露してくれる。「闘牛」「神樹」とか「疯人院/ 强迫症」なんかのステージは迫力満点。
周深 Zhou Shen
この人が参加してない音楽番組ってないような…。女性と聞き間違うハイトーンヴォイスで2016年最初の大ヒット曲「大魚」以来一線で活躍する歌手。OSTも含め毎年40~50曲も発表する売れっ子。この番組では普段と違う側面をいくつも見せてくれる。ロシア語曲「Baby ,До свидания」とか、死んだ愛人の遺産を受け継いだ男が主人公の「自己按门铃自己听」とか、この人は引き出しが幾つあるんだろう、と思わされる。
袁娅维 Tia Ray
パンチのある歌声のベテランシンガー。代表曲「不亏不欠」等
萧敬腾 Jam Hsiao
歌番組でよく顔を見かける台湾のシンガー。中国のポップスにはそこまで詳しくないので「王妃」くらいしか知らないけど。
胡夏 Hu Xia
この時点でも10年以上のキャリアがあるはずなんだけど、奇襲歌手として登場。OSTでよく見かける人。「明蘭」のエンド曲「知否知否」等。
コロナ禍でリモートに
この年は丁度コロナでスタジオ収録ができなくなり、この番組も3期からはリモート収録になった。台湾の歌手は台湾で、MISIAは日本で、中国国内もスタジオに集まれるのは数人、といった有様で、大々的なセットも作れなくなった。周深に至っては上海から出られず、自室からリモートで歌った回も。
日本は中国より規制が緩かったので、こじんまりとしているけど美しいセットが組まれていて、このような状況下でも視聴者に少しでも楽しんでもらいたい、という心意気が伝わった。これはMISIAおよびMISIAの周辺スタッフの努力の賜物だと思う。
他の歌手も「視聴者に勇気を与えたい」という真摯な姿勢がものすごく伝わって来るパフォーマンスが多かった。
それと、中国・台湾のシンガーたちのMISIAへのリスペクトが凄く感じられる。皆案外日本の歌を聞いていることも分かって面白い。
ただ、番組による投票数の操作疑惑はこの手の番組にありがちで、この番組でもMISIAに絡んだ疑惑があったり、他にもあれ?と思うことも正直あった。公正にやれよ、とは思うけどこの辺もお国柄なので、余り気にしない方がいいのだろう。
ともあれ、こうした番組を日本語字幕でストレスフリーに見られるのは嬉しい。面白かった。