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ファンタジーかと思ったらシビアな政争劇だった「紫川·光明三傑」

撮影から3年も経ってお蔵入りかと思われていた「紫川」が配信になった。

ファンタジー超能力バトルものかと思っていたら、意外に骨太なドラマだった。前半は「政争」後半はシビアな「戦記」で、面白かった。義兄弟の絆も熱い。

 

ストーリー及びエンドに触れています。ご注意ください。

「紫川」微博より 大変カッコいい三兄弟 なかなか三人一緒に戦ってくれない…

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西洋風ファンタジーから中華(っぽい)架空歴史ものへ

原作から設定がかなり大きくアレンジされていて原作やアニメ版を知っている人には「これじゃない」感はあると思うけど、これはこれで結構面白いと思う。

 

「紫川」はアニメのオープニングだけ見たことがあって(OP曲はドラマで大哥・帝林を演じる刘宇宁が歌っている)、西洋風の甲冑姿の主人公とゴブリンやらオークやらの敵軍が登場していたので、てっきりそういうファンタジー系のドラマだと思っていた。

ところが最初の大規模戦闘のシーンでそうではないことが判明。相手も人間だ(笑)。身なりも完全に中華風。

 

微博に掲載された監督さんの手記には「物語には中国風の歴史伝奇故事のエッセンスが描かれていることから『写実』を選んだ」(大意)とあった。

確かにストーリーを考えると、これを西洋風の衣装やセットで描かれたら違和感が残りそうだ。「義兄弟」がテーマだし、中国ドラマの「西洋風」って何処となく奇妙なことが多いし…。原作では敵国は「魔軍」なのだけど、映像化するとチープになりがちだ。

そういう意味で改編は英断だったと思う。

 

あと、主人公たちのちょっと西洋味の残った甲冑はなかなか良いデザインで、かっこいい。衣装デザインは私服も含め、とても良いと思う。

 

前半は三兄弟より狸親父たちが主役

陥れられ7年もの間辺境の地で戦いに明け暮れていた主人公・紫川秀(杨旭文 飾)の帰還から物語は始まる。彼と近衛軍頭領(紫川家の身辺警護)の斯特林(张铭恩 飾)、紫川の実権を握る楊明華の側近・帝林(刘宇宁 飾)は義兄弟の契りを結んでいる。(大哥が帝林。二哥が斯特林、三弟が紫川秀)

彼らは国の為、専横を繰り返す楊明華を倒そうと陰で画策しているので、義兄弟であることは秘密だ。なので、三人一緒のシーンはなかなか見られない。

 

紫川の政治機構は複雑で、基本は寡頭政治。亡き皇帝の弟・紫川参星(马少骅 飾)と楊明華(张帆 飾)、紫川秀の軍の上司にあたる哥応星(修庆 飾)で方針が決められるようだが、他に大貴族による長老会があり、大事は彼らの了承がないといけないらしい。

张帆は「一念関山」で紫衣衛の頭領をやっていた人。今回もだんだん気の毒になってくる役(笑)

寡頭政治の三人は皆強烈な狸親父だ。病弱でボケたふりしている紫川参星。いちいち兄貴の遺品を持ち出して相手を試す態度がイヤらしい。

ずっと鍛冶場にいる楊明華は、側近も信用できない。野心満々というより、周りから何時かあいつは謀反を起こすと思われ続けて、本人もそれが面倒で謀反の方向に走っているような感じ。一番まともそうに見える哥応星ですら、何処か野心を秘めていそうで、軍権を握っている以上油断ならない。

 

…ドラマの前半の見どころは若者三人よりこの三人の狸親父たちで、役者さんの好演が彼らの複雑な人間像と細かな心の揺れを浮き彫りにしてくれる。中国ドラマの魅力の一つはこうしたおじさんたちが沢山いることだと思うけれど、本当に上手い。

 

主人公たち三人は以心伝心の仲なのだけれど、あちこちに不穏な空気が燻ってもいる。

狸親父’sの楊明華と哥応星と亡き皇帝・紫川遠星もやはり義兄弟で、彼らの対立は主人公たちの将来を暗示するかのようだし、エンド曲「老朋友」の歌詞も然り。

この空気はドラマの底辺を流れ続けていて、観ている側は彼らがいつ道を分かつのかとハラハラし続けることになる。

 

細かな心情描写は秀逸

政治闘争の一方で、義兄弟たちの恋愛も描かれるのだが、こちらの描写も細かい。まあ、これのせいで話の進行が遅いという欠点もあるんだけど。

特にヒロイン、紫川寧(李墨之 飾)と主人公の恋愛にはかなりの尺が割かれている。特にいいなあと思ったのは、主人公が送り付けた一見ガラクタのような品々を彼女が一つ一つ取り出す場面だ。

 

彼女は秀に沢山手紙を送ったのに、秀からは返事が全く来ず、たまに馬のしっぽ等奇妙な品が送られてくる。彼女はそれを大切にとってあるのだけれど、意味が分からない。実はそれらは戦場での辛い想い出の品々で、どうしても彼が捨てられなかったものだ。秀はそのことを彼女に言わないけれど、7年間の戦場の過酷さ、そして彼女の存在がどれだけ彼の心の支えだったのか、彼女への愛と信頼が無言のうちに伝わる良いシーンだ。

 

他にも、奥さんの前では人が変わったように穏やかで優しい大哥や、相手に渡せない手紙を書いては燃やす二哥と敵国の人質・卡丹公主(蔡卓音 飾)の切ないシーンも印象的。どのカップルにも明るい未来が待っていなさそうで、余計に切ない。

 

戦闘シーンはとても少ないが、戦争の泥沼っぷりは描かれる

後半になると、いよいよ北との戦争が本格化する。

戦闘シーンが少ないのは多分予算の関係…なのだろうけど、ちょっと少なすぎる気が。ただ、辺境での戦いの苛酷さは伝わって来る。

 

糧食とお金に苦労する軍、というのは余り他のドラマでは描かれない側面だ。糧食を買う金を皆で稼いだり、領主と交渉して供出させたり。後方支援が何もないので大変だ。

戦乱地域の村の食糧難や、斯特林の軍が木の根を煮て食する様は悲惨だ。それでいて領主である貴族はいいもの着ていいもの食べてたりするのを見ると、誰でもいいからこの国立て直してよ、と言いたくなる。

 

最終盤はいよいよ北との戦闘だ。状況も作戦もよく分かるし、戦闘シーンは迫力もあってなかなか良い出来。…なんだけど、花架にあったスタントシーンがないのは何故?第二季分?

これからだ!ってところで第二季に行かないで…。

 

第二季は…いつ配信?

エンドは昨今流行りの「え?ここで?」エンド。

WIKIの情報では下部があるようだし(暫定24集となってる)公式微博にも「期待第二季」とあるし、予告に使われたカットで本編に登場していないものもあるので、既に撮影済の第二季があるのだと思うけど、いつ配信されるのか…。

主人公が有している特殊能力が何処からきているのか、とか主人公の出自、とか、伝説の高手の話とか24集で積み残された謎は山ほどある。オープニングの空飛ぶ兵士とか黄金の仮面とかも出てきてない(泣)

刘宇宁が直播で「撮影初日にいきなり3mの高さの崖に連れていかれて、ワイヤーつけられて『飛んで』って言われた」と話していたけど、大哥が高いところから降りてくるカットなんてなかったような。

 

…上集も3年も掛かってるしなあ。まさかあそこで終わらないよね?

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題名:紫川·光明三杰 紫川·光明三傑 Eternal Brotherhood 24集

原作:老豬 著「紫川」

編劇:田良良「三体」「終極筆記」

導演:張萌 衛立洲

出演:杨旭文 William Yang Xu Wen 刘宇宁 Liu Yuning 张铭恩

 

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