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「一念関山」は楽しい① ~10集辺りまで

11月28日から始まった「一念関山」。すごく楽しみにしていただけに、ドラマの出来が良くて嬉しい。

 

劉詩詩の6年ぶりの復帰作、ということでスタッフも豪華。原作なしのオリジナル作品で脚本が「夢華録」の張巍、監督は「镇魂」の周靖韜と「沙海」「终极笔记」の鄒曦が務めている。

出演者は劉詩詩の相手役に摩登兄弟劉宇寧、その部下には方逸倫(「長歌行」等)、王一哲(「尚食」等)など、華やかさも実力もある面々が揃う。

予告編の印象ではもっと暗い、重い物語かと思いきや、華やかなアクションと軽妙な掛け合いのバランスがことの他良くて楽しい。

 

物語はシンプルと言えばシンプル。戦争に負け敵国・安国に捕まってしまった自国・梧国の皇帝を身代金と引き換えに取り戻しに行く一行の物語。一行の隊長が男主の六道堂堂主・寧遠舟(劉宇寧 飾)、それを助けるのが元・安国朱衣衆の暗殺者・任如意(劉詩詩 飾)。

六道堂には手練れの部下が揃っているものの、道のりは険しい。何せ捕まった梧国皇帝(張天陽 飾)はぼんくらっぽいし、監国の皇弟も皇后も首輔も最高権力者になりたいと虎視眈々。特使に選ばれたのはどうでもいい(=途中で死んで失敗してくれればOK)な冷宮育ちの公主・楊盈(何藍逗 飾)。とりあえず10集くらいまでは自国内で味方に狙われつつ安国を目指す展開になる。

以下、多少ネタバレしています。ご注意ください。

一念関山 微博より 敦煌で撮影されたスチルはどれも美しい

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①劉詩詩がことのほか美しい

このドラマは彼女の復帰作なので、彼女の役柄、彼女の映し方には最大限の注意が払われている。これまで劉詩詩のことを「可愛い」と思ったことはあっても「美しい」とはあまり思わなかったけれど、今回は美しい。容姿もだけれど佇まいとか、役柄も本当に美しく且つ凛々しい。孤高の暗殺者、みたいな役は初挑戦だと思うけれど、アクションシーンも舞うように仕留める、というか彼女の軽さ、美しい所作が際立つように設計されている。

男主の寧遠舟のアクションは重い、というか全体重をかけて粉砕するような剣の使い方で、この対比も楽しい。

この二人の衣装は袖が長めになっていて(六道堂の正装の時にはマントがついている)動きの度に翻って凄く綺麗。

 

②一行の人間関係が楽しい

それぞれの国は複雑な事情を抱えていて人間関係もぎすぎすしているけれど、旅の一行の方はほのぼのと楽しい。ボス(というか兄貴分)の恋愛を茶化しまくる六道堂の面々(キスシーンでは落ち葉を散らす演出までしてくれる)も楽しいし、凡庸なようでいて、真面目で優秀な官吏の杜大人(呂行 飾)もいい感じ。普段はほのぼのしていても、戦闘シーンでは作戦を次々実行し、連係プレーを見せてくれるのも嬉しい。(作戦をちゃんと説明し、段階ごとに見せてくれるアクションシーンは、武侠ドラマでもなかなか見られない。ほら、武侠ものの主人公って、大抵単身で斬りこんだりするし)

 

如意と公主の師弟関係も感動的だ。公主役の何藍逗、今回凄くいいと思う。最初はピーピー泣いていたばかりの公主が、如意の薫陶を受けて徐々に成長していく様は見事。(でもその成長が結実するのはもう少し話が進んでからだ)

 

③ロマンスの展開が細やか

10集くらいまでは、尊敬する亡き皇后の遺言を実行しようと、如意が寧遠舟に「子供が欲しい」と一方的に迫る展開が続く。ただ、迫りはするけれど彼のことが好きなわけではなく単に「背が高くて武術が強いから」という理由で、彼女の心情自体は殆ど語られない。その代わり寧遠舟の彼女に対する気持ちの微妙な変化が、本人に対してではなく六道堂の于十三(方逸倫 飾)や元禄(陳宥維 飾)に対して語られる、という構成だ。

ロマンスシーンには所謂「月夜のお花畑で…」みたいなベタな展開もあるのだけど、その前に寧遠舟が任如意に「本当に子どもが好きで産みたいのか?」と問うシーンがあり(その時彼女がただ皇后の意に沿おうとしていることが分かる)更に「彼女のことを哀れだと思う。復讐や子供を産む以外に面白いことはもっとあるのに(意訳)」という寧遠舟の台詞があることで、彼女を見つめる寧遠舟の複雑な心情が分かる。

…なので、如意がお花を摘んだりしていても、凡百のそういうシーンとは違って見える。この辺り、やっぱり「夢華録」の脚本家だけのことはある。

 

後に、寧遠舟が于十三に彼女のことを語るのを、如意が屋根からこっそり聞きながら涙を流すシーンがあるのだけれど、このシーンがとても好きだ。情景の美しさと相まって、切ない。

 

④男主に劉宇寧の起用が正解か

これはキャスティングが発表になった時からあちらで話題になっていて、配信が始まってからも度々蒸し返されていた。何せ劉宇寧は男主1は演じたことがない。

 

私は劉宇寧のファンなのであんまり公平な立場ではないけれど、起用は上手くいったと思う。お仕事はできても恋愛面ではちょっとヘタレ、な役なので、余りに主役オーラ全開でも困るだろうし、今回の主役はあくまで劉詩詩だ。

劉宇寧の演技力は前よりはずっと向上しているし、姿勢の悪さ(これは劉詩詩に随分言われたらしい)も直っていて、「偉丈夫」って感じに見える。

スタッフからも男主として大事にされていると思う。劉宇寧のデカさ(背が高いだけでなく、全体的に大きい感じがする)を生かした構図、アクション設計もされているので、決める時は決める、という感じでカッコいいです。

監督さん、ありがとう。

 

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