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市井の人々の心意気に涙する「群星閃燿時」(~大結局)

「群星閃燿時」観終わりました。アクションとかスパイものではなく、レジスタンス劇としてとても面白かったです。

ここから先は中盤以降のストーリーのネタバレがあります。ご注意ください。

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「群星閃燿時」微博より

中盤以降の物語

子連れの逃亡劇は前半まで(少女は無事、上海から脱出)。四所警察の面々との絆は深まるものの、骆珉敏(任敏 飾)が少女の両親を殺害した犯人から半殺しの目に遭ってしまったり、いろいろ大変。

何しろ警察と言っても、大した訓練も受けていない、普通の人たちなのだ。主人公・華禎(李现 飾)は海軍学校に通っているので多少は動けるし、隊長・陳浩(周游 飾)も心得はあるけれど、他の人たちは至って普通。四所警察の所長の一番の仕事は皆のお昼を作ることだ。

 

華禎は使っていた偽名の件で、元々共産党との繋がりを探っていた公安・魏岱擎(王茂蕾 飾)により裁判にかけられることに。

裁判劇の後、華禎は南京に戻ることに。学校の訓練で再び上海の土を踏むが、数か月の間に

四所警察は解散、署員たちは警察をクビになっていた。そこに警察上層部と日本軍との繋がりを示す写真を撮影した記者が行方不明になる、という事件が発生。何者かに追われる妻を骆珉敏と共に匿ったことから、華禎は再び警察上層部や華禎逮捕を諦めない魏岱擎らとの争いに身を投じていく…。

 

で、一体いつ頃の話?

漠然と1930年代かなあ、と思ってはいたけれど、後半になって時代を特定することのできる台詞があった。言及されるのは「七君子事件」。

…全然知らないけど実際にあった事件らしい。

 

コトバンクによると「七君子事件」は1936年11月、上海で抗日救国運動指導者7人が逮捕された事件。ドラマの中で石珺昱(王紫璇 飾)らが属している組織「救国会」が行っていたのがこの抗日救国運動、ということのようだ。

この頃は丁度共産党の所謂「長征」が終わった頃。日本は1931年、満州事変で満州国を設立して以来中国大陸支配を進めていて、国民党政府は日本政府に対抗するより共産党撲滅に力を入れていた、という力関係。

ドラマの最終盤で「七君子は解放された」と言及されるけれど、七人が釈放された理由は盧溝橋事件が起きて日本と開戦状態になったから。盧溝橋事件は1937年7月の出来事なので、ドラマ内の時間は1936年の夏~冬にかけての出来事だと推察できる。戦争がすくそこまで迫っている空気感はあっても、切迫するまでには至っていない、そんな時代だ。

 

ドラマで描かれる上海は、警察や公安の横暴はいろいろあるけれど、基本的に人々は普通に暮らしているし、上流階級の人たちは西洋風のカフェやホテルで優雅に過ごしている。一方で陳隊長の部屋は古くて扉もガタガタだったり、街中は綺麗に舗装され車が通れるのに、苦力の働く港は泥でぬかるんでいたり、落差も激しい。この辺りセットもきちんと設計されていて効果的だ。

 

特に街中や部屋の中に貼られているポスター類は、レトロ感溢れる美しい仕上がりで、背景に映りこむと思わず見入ってしまう。美術さん、Good Jobだ。

 

普通の人々が立ち向かう姿は美しい

このドラマの主人公は普通の人々だ、と上にも書いた。

それを体現しているのが骆珉敏で、このドラマの任敏はとても普通で、いいと思う。

 

骆珉敏の家庭はとても暖かい。写真店を営む父親、兵役が嫌で逃げてしまった兄、出来のいい妹。みんないい人たちで、この人たちが幸せに暮らせるようにすることが骆珉敏が警官になった理由だ。

決して出来のいい警官ではない彼女の行動は家族に心配をかけまくるけれど、警官としての自分を頼りにしてくれる人を何とか守りたい、守ろうとする骆珉敏の姿勢は美しい。

 

警察をクビになり生活に追われながらも、彼女や華禎に協力してくれる四所警察の面々も清々しい。

 

華禎は設定が「海軍学校の学生(在学中)」なので、本当は李現よりもう少し若い年の俳優さんでも良かったんだろうけど、ハードとソフトの割合というか、李現は強面な外見でありつつ繊細な芝居をする俳優さんので、やっぱ李現が適役なのかも。華禎と骆珉敏のロマンスは淡く切ない。

 

かなり大きな組織だと思われる救国会のメンバーにしても(上海の支部は人が減ってしまってガタガタみたいだけど)そんなに多くの秘密兵器を隠し持っているわけでもない。せいぜい隠れ家とか、モールスでの連絡とかだ。捕まってしまえば助け出すのも難しいし、行方を捜す手段すら持たない。

 

そんな人たちが、軍と警察の上層部の企みを潰そうと傷だらけになりながら頑張る姿はやっぱり感動的だ。このドラマには誤解に基づく妙な日本人描写もないし(悪人なのは時代が時代だから仕方がないけど不正確なのはやっぱり不快)悪い連中にもそれなりの事情とか心の動きとかがあって(魏岱擎は心底嫌な奴ではあるけれど、彼の上流階級に対する羨望と恨みの感情は理解できないわけではない)唯の悪人になっていない点も好感が持てる。

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題名:群星閃燿時 群星闪耀时 shooting stars

導演:万里扬 編劇:浦维 黄琛 34 集

出演:李现 Li xian 任敏 Ren Min 周游 Zhou You 王紫璇Wang Zixuan

 

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