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開始推理吧 第2季を振り返る

「開始推理吧」第2季が大団円を迎えた。3か月十分楽しませてもらったし、冷静に考えても、とても手のかかった、よく出来たバラエティだったと思う。

キャスト一人一人についての監督さんの長文が微博に掲載されていて、番組作りの一端が分かったので、感想と併せて記しておきたい。

「開始推理吧」微博より 3か月間楽しませてくれてありがとう!

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システム変更と尋問シーンのあれこれ

第2季は第1季よりシステム面で大きな変化があり、かなり独特なバラエティになったと思う。第1季からのシステムの変化は次の通り。

 

①犯人が必ず6人(レギュラー+ゲスト)の中に必ずいる

第1季は殆どが複数のゲストの中から選択(レギュラーの容疑者は一人だけ)

②探偵役をはっきり決め、更にうち1人は犯人の協力者「X」

毎回容疑者4人+探偵1人+X1人(探偵役は1人の時もあり)となる。

③番組構成上の変化

最初にある程度の証拠品と容疑者尋問を行い、その後全員での探索パートに以降、

最後に最終討論というように、形式をはっきりさせた。

(第一季は構成が流動的で、それがダレる原因にもなった)

 

主役級の役者さんを4人も揃えての「バラエティ」として、この形式は大成功だと思う。

 

尋問パートは事前準備をかなりしっかり行ったようだ。監督さんの手記に「事前に人物カードを渡して模擬尋問をする時に…」というくだりがある。出演者は毎回、演じるのがどのような人物設定なのか、人間関係はどうなっているのかを書いたカードと、証拠品の順番を書いたものを渡される。それを覚えたうえで監督さんと一人一人模擬尋問を行い、どんな質問が来るのか、それにどう答えるのか、その上でどんな質問が来て…というリハーサルをやるようだ。その時に演ずる人物についての掘り下げ等も行うとのこと。

 

予想以上に本格的に「演技」が要求される仕様だ。出演者も演出側もかなり大変。シチュエーションを覚えて、しかも台詞はその人物になり切って自分で考えないといけない。もう少し台詞に近いものが用意されているかと思ったけれど、そういうわけではなかったようだ。

张凌赫が最初の頃「台詞が決められてないお芝居は初めて」とぼやいていたけれど、確かに難しい。どちらかというとバラエティ畑の周柯宇はすごく頑張ったんだと思う。

多くの努力の甲斐あって尋問パートはどれもとても面白かった。

 

Xはどうやって決めているのか?

監督の手記によれば、Xは演出側の意図としても犯人役に多すぎる負担がかからないように、との配慮だったようだ。

建前上は犯人が選ぶ、となっていたけれど、私はてっきり演出側が選んでいるのだと思っていた。どうやら違ったようで、本当に出演者が決めていた模様。

 

手記の中で「来たばかりの金靖が迪麗熱巴を選んだので理由を聞いたら、今日の撮影で(暗転時に)彼女が抱きしめてくれて安心したから(大意)」と書いてあった。金靖は刘宇宁と同じくらい暗闇が苦手なようで、そういえば迪麗熱巴がいつも側について抱きしめてあげていた。

 

もっと演出側の意図が入っての人選かと思ってた。一番X役が多かったのは刘宇宁で、探偵役を振られた時には必ずXに指名されていた。確かに、敵に回すと見破られちゃいそうだし、味方にすれば頼りになりそうだ。

逆に1階もXをやったことがなかったのが周柯宇で、火鍋パーティで「やりたかったのに」とこぼしていた。

 

探索パートはスタッフの努力の結晶(だと思う)

今回、ロケセットになったおかげで外景はすごく充実した。少しでも街のシーンがあると時代性が増すし、何より美しいので画面が華やかになる。特に前半の時代(1920年代・1980年代)は外景を活かした演出もあって、楽しかった。未来篇第9集の古い塔を活かしたトリックも(あの塔は窓が小さいので、階層トリックに向いている)お約束で、ちょっとワクワクさせられた。

 

探索パートでは大道具・小道具さんたちの「いい仕事」ぶりが際立った。どの部屋もかなり作りこんであって、単に証拠探しの場所というだけでなく、その人物が持っていそうなもの、住んでいそうな部屋になっていた。

 

すごく凝っているなあと思ったのは2000年代の学園ものの廃棄空間。あそこ(確か白宇が最初いた部屋)壁一面に殴り書きがしてあって、それがちゃんと怪談ぽい物語になっていた。(ある生徒が卒業証書を金で買ったが行方不明になり、廃浴室をさまよっていた…という内容)

他にも、各話の集合写真の中に必ず前の時代の集合写真が写り込んでいたり(これは動画で知った)お遊びも多い。

 

証拠品づくりも大変そうだ。時代が下がるにつれ、メールやチャットが証拠品絡みで登場する。このバラエティの作家さんが何人いるのか分からないけれど、あれだけの分量の文章を書くのは大変な労力だ。

今シーズンはNPCとしてゲストの役者さんを呼ぶ、というのを殆どしていないので、キーパーソンもチャットの中だけに登場、というのが多かった。1980年代の「巴弟」や2000年代の「胡杰」「艾唱歌」といった人物は、登場しないにも関わらずどんな人物でどんな人生をたどったのかが文章の中からちゃんと浮かび上がっていた。

 

探索パートの進行は?

皆で証拠を捜す、といっても誰かが進行しないと番組は前に進まない。実際に番組を見るまで進行役は王迅・金靖が務めるのだと思っていた。二人ともバラエティ番組の経験は多いんだし、他の人は役者さんだし。

蓋を開けたら、進行役は刘宇宁が務めていた。(監督の手記でMCって言っちゃってるんで、予め決めてあったのだと思う)MCは経験ないんじゃ…と思ったけれど、ドラマの宣伝直播なんかではよく進行役してたっけ。

 

刘宇宁は特に前半の時代は発言を促したり暗号を解く役を割り振ったりして、キャストが活躍する場を作ろうとしている姿が印象的だった。推理の発想が独特な迪麗熱巴が発言を躊躇していると「ちゃんと皆ついてくるから大丈夫」と声かけしてくれていた、と監督の手記にもある。後半はキャストそれぞれの得意分野がはっきりしてきたのと、キャスト同士の仲が良くなって、何もしなくてもどんどん進行していく感じだったけれど。

 

「犯人あて」は「ガチ」

番外編でも書いたけれど、キャストは皆かなり一生懸命推理していたみたいだ。ご飯休憩の時には皆、これまでの証拠を整理したりして考え込む姿があったそう。张凌赫は尋問パートの練習時、監督さんに「で、この人が犯人?」と聞いてきて反応を見ていたそうだ。監督さんでダメとなると刘宇宁の処に聞きに行っていたらしい(笑)。

結局、金の匙を一番多く集めたのは白宇。探索パートはサボり気味…と思いきや、全員を観察して考えていたらしい。監督さんにも「犯人を推理するのが楽しいから平民がいい」と言っていたようだ。本気モードだったのね。

 

ストーリーについて

今シーズンも凝った話が多く、バラエティに富んでいた。「臓器売買」「いじめ」「人体実験」「自傷」等結構攻めた題材も多かった。バラエティだから、或いは配信オンリーだから多少規制が緩いのかもしれないけど。扱われている題材を見ると、何処の国も悩みは変わらないんだろうな、と思う。

 

推理がちゃんと成立しているか、というと微妙な点もなきにしも非ずだけど、物語はどれも面白かったのでいいかな。個人的には第3案~第4案の流れがスリリングで楽しかった。どこかで時空間軸がずれてしまっていることが分かって、誰がどの時点で失踪しているのか、を紐解いていくのはスリリングだった。殺されたのが誰だか分からない、という設定も絶妙。

第9案も面白かった。容疑者全員のこれでもか、というくらいに盛った設定の尋問パート、二転三転する真相は見応えがあった。

 

時代が変わるごとにミュージカル風の歌やダンスが入るのも楽しかった。メイキングを見ると踊りの先生が見本を見せて「ハイ、やってね」って感じで、あれで正確に踊れる迪丽热巴ってすごい。

 

キャストについて一言

白宇:犯人1 X1 探偵2

収録中一番リラックスしているように見えた。暗闇の中での先導役は常にこの人。「小殺手」「小X」と言葉をぶつけて反応を見る、という遊び方を始めたのもこの人だ。番組の中でどうやって遊ぶか、番組のシステムをどう利用して楽しむかを考えてくれる貴重なキャスト。周柯宇とは特に仲が良いらしく、二人がじゃれている様子を楽しむCPファンも多いみたいだ。

 

迪丽热巴:犯人0 X1 探偵2 被害者1

番組では様々なコスプレ…じゃなくて凝った衣装が用意されたけれど、何を着ても似合う。何を着ても綺麗。監督の手記で「すっぴんも綺麗」とあった。

第0案では初めて「一人で現場にのぞむ」経験をしたらしい。確かに普通なら一人きりのシーンでも周りにスタッフが沢山いるものだけど、あれカメラも含めて皆隠れてたのね。

第9案では「連続殺人鬼」役を披露。いい感じにヤバそうで、大変魅力的だった。

 

刘宇宁:犯人2 X4 探偵0

進行、犯人、探偵(X)、と一番大変だったろうと思われる。毎回のコスプレも気合十分で、鮮やかに謎解きをする頼れる兄貴。でも暗闇では役立たず(笑)。暗闇は苦手を通り越してダメなようで、第0案の時に「気温17度なのに汗びっしょりで本当に怖がっていた」と監督さんに驚かれてた。キャスト仲間はその様子にすぐ慣れたみたいで、周柯宇か张凌赫が必ずアテンドして「没事」を繰り返してた。第10案ではとうとう暗闇の部屋には入らず門番に。でも他が全員捕まった時には冷静に対処していて、皆も「絶対助けてくれるから大丈夫」と言い切っていた。互いの強い信頼関係が垣間見られた瞬間だ。

 

张凌赫:犯人2 X2 探偵2

前半の収録時には他のキャストと殆ど初見だったのに、後半の収録が始まった時には他のキャストが「何処から来て、何時に入るか」を全て知っていたらしい。全員の連絡先をゲットしていて、前日に「ねえねえいつ来る?何時に着く?」って聞いていたのかと思うと微笑ましい。

数学系の問題はすごいスピードで解いてみせる。これからバラエティの出演依頼が増えそう。

最初は所在なさげだったのに、いつの間にか犯人役で全員を騙せるまでに成長。刘宇宁からはずっと「シグネチャーボイスだから」と歌を歌うことを勧められていた。本人はあんまり乗り気でなさそうだけど。ボイトレの先生に怒られるからか。

 

周柯宇:犯人3 X0 探偵3

よく気が付くみんなの「弟弟」。张凌赫より5つも年下だとは思わなかった。迪丽热巴が寒がっていれば上着を差し出し、白宇には充電用の椅子を持ってきてあげる良い子。

犯人の時でも言ってることは殆ど正しい。探偵役の時はもっと正しいのに、最後の最後で他の人の言うことを聞いてしまって間違える。火鍋パーティでも「聡明だけどおバカさん」と評されてた。きっとすごく素直ないい子なんだろう。

 

王迅・金靖:

王迅は独りだけ世代が上で心配だったけど杞憂だった、とは監督さんの言葉だけど、まさにそんな感じ。金靖はムードメーカーで、進行が滞りそうになるとジョークで上手い具合に救っていて流石だ。

「開始推理吧」微博より 演技バトルの場でもあった動脳堂

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「開始推理吧第2季」は即興劇とリアリティショーの要素を合わせた推理バラエティに進化を遂げたと言っていいと思う。中国のバラエティは(そこまで沢山見ているわけではないけれど)どちらかというと作りが緩いのだけど、この番組はとてもテンポが早い。情報量が多くて1分進めると話が大分進行してしまうので、メモを取るのが大変だった。

役者さんばかりを集めてバラエティを成立させてしまうのも、かなりすごいと思う。

 

全体に現場の雰囲気の良さが滲み出ている感じがするのも、素敵な点だと思う。スタッフもキャストも、通常のバラエティより段違いに作業量が多そうな番組だけど、皆仕事を楽しんでいる感じがする。

 

…あれだけ「第3季やります!」って言ったんだからやるよね?

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題名:開始推理吧第2季 开始推理吧第2季 The Truth 2

出演:白宇 Bai Yu 刘宇宁 Liu Yuning 周柯宇 Daniel Zhōu Keyu 迪麗熱巴 Dilreba

   張凌赫 Zhang Linghe

 

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