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「唐朝詭事錄之西行」②「寒州雲鼎」って何処?(~30集辺りまで)

7集以降、再び都を離れることになった盧凌風と蘇無名。ばらばらに旅立ったものの、結局合流し、裴喜君・費雞師・櫻桃と5人で西へと向かう。

 

ドラマは、だんだん都から離れて僻地になっていく感じがよく分かるように描かれている。赴任先の「寒州雲鼎」ってどの辺りなのかも気になる処。中国ドラマの地名は大抵仮名だけど、モデルになった地域くらいあるだろうし、ちょっと調べてみよう。

 

ここから先はストーリーのネタバレが含まれます。ご注意ください。

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「唐朝詭事錄之西行」微博より「千重渡」ポスター 西行は危険が一杯

「寒州雲鼎」ってどこ?

盧凌風の辞令は「寒州雲鼎県尉」。西の果てらしいけど、一体どの辺りだろう?

中国の地理の知識には全く自信がないので、豆瓣の討論を見てみた。

 

寒い州だということと西の果てということを考え併せると「寒州=涼州」となるらしい。涼州は現在の甘粛省にあたる。ドラマの中で「雲鼎」の特産品は葡萄酒ということになっており、実際の甘粛省の特産品も葡萄酒なんだそうだ。

 

涼州といえば「涼州詞」が有名だ。作者の王翰(687-726)は丁度この時代の人。…そういえば、この詩の冒頭にも「葡萄酒」が登場してたっけ。

 葡萄美酒夜光杯

 欲飲琵琶馬上催

 酔臥沙場君莫笑

 古来征戦幾人回

 

涼州詞」は凄絶な戦場の夜を描いた詩だ。唐の時代、涼州吐蕃との闘いの最前線でもあった。ただ、710年代から730年くらいまでの間は吐蕃は内紛続きで、唐とは度々講和していたようだ。

 

雲鼎が果たして甘粛省のどの都市かというのははっきりしないけれど、シルクロードの中継地で西夏等の首都がおかれていた古都・武威辺りがモデルの一つかも。

 

シルクロードをたどり武威をもう少し西に行くと敦煌がある。敦煌の先には「陽関」があるけれど、ここも「涼州詞」と同じ王翰の「送元二使安西」に登場する。

 渭城朝雨浥軽塵

 客舎青青柳色新

 勧君更尽一杯酒

 西出陽関無故人

 

最後の一行「西のかた陽関を出ずれば故人なからん」の部分が有名だ。

この詩に登場する友人は安西都護府に赴任する予定。安西都護府は砂漠のオアシス国家を傘下に収めた唐が、西域の監視の為に設けた役所だそう。この辺りは武則天の時代にも吐蕃と奪い合いをしていたようだ。この辺りが唐の時代の西の果て、って感じだろうか。

…何となく、イメージは掴めたかも。

 

「県尉」は何をする人?

第二季登場時、盧凌風は大理寺少卿(従四品下)だったけれど、あっという間に左遷、県尉(ランク分けがあるようだけど辺境なので多分従九品下)に格下げされた。蘇無名に至っては無位無官に。

 

どんな仕事をするのかというと要は警察局長、だそうだ。県令の補佐として賊を捉えたり治安を維持したりするのがお仕事。ちなみに第一季の蘇無名登場時の役職も県尉だった。

「唐朝詭事錄之西行」微博より「雲鼎醉」ポスター 西の果ての街は治外法権

だんだん都が遠くなる

都から寒州雲鼎を目指して一行は旅をし、途中途中の街で事件に巻き込まれることになる。

多分大雑把な道筋はシルクロードなんだろうけど、個々の街に明確なモデルはなさそうだ。ただ、だんだんと街が辺境になっていく様はなかなか面白いので、その辺りをちょっと抜き出してみた。

 

仵作之死(ドラマ内の街前:拾陽)

別々に出発した盧凌風と蘇無名が合流するのがこの事件の街。都では(多分)有名人な2人、この辺りだとまだその名は知れ渡っている模様(でも時代が時代なんで、名乗り出なければその人と分からない)。

「(供養で用いる)土人形が人を刺し殺した」という怪事件だけど、複雑な人間関係を紐解いてゆく物語で、怪異の度合いはまだ少ない。この街の背景として「墓荒らし」が横行していることから、墳墓あるいは石窟等が近くにある古都なのかも。

第一季の「黄梅杀」に登場した独孤遐叔(韩承羽 飾)が再登場したりして、視聴者を喜ばせてくれる。

 

風雪摩家店(ドラマ内の街前:深県)

西に向かう時のお約束として登場する「雪山」と「砂漠」。このお話は雪に閉ざされた宿での殺人事件。殺された商人が中東風だったり、遺棄された軍隊の残党が登場したり、そろそろ西域に近づいている感じがする。

お話は宿の離れでの商人の密室殺人。…のはずが、大規模な遺跡の探索、未知なる生物との死闘に発展。蘇無名の「西には我々の知らない生き物がいる(意訳)」という言葉通り、この辺りから伝説上の生き物が登場、異域に入り込んだ感が増してくる。

 

この物語で盧凌風が手にする「舌舎利」も(信仰の対象なので失礼なのだけど)不気味な秘宝。「舎利」は釈迦や高僧の骨のことで、信仰の対象として美しい容器に入れて保管された。「舌舎利」は高僧が解脱した際残される結晶(!)のことで、大変貴重なのだという。

この秘宝は伝説ではなく、実在するそうな。

 

千重渡・通天犀

ほぼ2つ繋がっているお話。砂漠を越え、河を渡ろうとした一行だが、馬は渡さないのだと言われ、手放さざるを得ない。これが伏線。

河の真ん中で怪物蛸に遭遇、盧凌風は怪物と連戦することに。その後、渡し場の一行の背後に「太陰会」なる秘密結社がいて、叛乱を目論んでいることが発覚。馬は軍馬として集めていたようだ。

 

一行は太陰会の本拠地の街へと向かう。この街辺りになると朝廷の力はかなり弱まっており、太陰会が街を牛耳っている。庶民の多くは結社に属しているし、官吏も結社と通じているかもしれず、信用できない。そうなると武力衝突は不可避。叛乱自体は政権を転覆、というより一向一揆なんかを思い起こさせる。

山の神と思しき巨大なサイ、そのサイを操る美女…と伝奇要素も多め。

 

雲鼎醉

とうとう赴任地、雲鼎に到着。

ここまで来ると唐の威光はほぼ届いていない。盧凌風と蘇無名は物語中の人物だと思われている。「夜市」をはじめ街は独自ルールで動いているし、その中に更に治外法権の市が立ち、人身売買も行われている有様。

 

県令をはじめ官吏は「朝廷から忘れられた」と考えているから、横行する犯罪を観て見ぬふりをするか、加担して甘い汁を吸うことになる。一方で朝廷の権力者を父に持つ裴喜君をありがたがり、何とか中央とのコネをつかもうとする。

 

この辺りのリアルな感覚と、不可思議な術や生き物がバランスよく共存しているところがこのドラマの面白いところ。

 

お話はある人妻の失踪事件から、どんどん大規模な悪事に話が広がってゆき、面白い。

 

物語はあと10話、クライマックスにはどんな事件が待っているんだろう?

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題名:唐朝詭事録之西行 唐朝诡事录之西行 40集

HORROR STORIES OF TANG DYNASTY II TO THE WEST

編劇:魏风华 導演: 柏杉 

出演:杨旭文William Yang Xu Wen 杨志刚Yang Zhi Gang 郜思雯 陈创 孙雪宁

 

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