lienhua’s Dragon Inn 龍門客棧

中国ドラマと香港映画について書いています 記事についてはINDEXをご参照ください

「唐朝詭事錄之西行」①ドラマの裏にある歴史って?

「唐朝詭事錄」の第二季、相変わらず面白い。

二転三転する不可思議な事件は外連味たっぷり、蘇無名と盧凌風が(いろいろ苦労しつつも)鮮やかに解決する爽快さ、アクションシーンの豪快さ。楽しい。

 

第7話冒頭、太子が即位し新たな皇帝になったところで、ふと思い出した。

そういえばこのドラマ、一応唐の歴史に基づいているんだった。だとすると、これって盧凌風のピンチなんじゃ…。

実際の歴史はどう動いたのか、気になるので調べてみた(と言っても主に日本・中国版のWikiからだけど)。

 

ここから先はドラマのストーリーのネタバレが含まれます。ご注意ください。

--------------------------------

「唐朝詭事錄」微博より 今季もお話毎に違うポスターが登場

時代はいつ頃だったけ?

これまであまりはっきり年代は語られてこなかったと思うけれど7話で「先天」という年号が登場。時代がはっきりした。先天元年は712年、唐・玄宗が即位した年だ。

 

ドラマでは「太子」「公主」としか呼ばれないけれど、公主とは「太平公主(667年-713年)」太子とは李隆基、即位した後は「玄宗皇帝(685年-762年)」のこと。

 

そもそも蘇無名と盧凌風の師匠、狄仁傑(630年-704年)が宰相を務めていたのは武則天の時代。その頃都は洛陽だったので、ドラマの設定では狄仁傑のお墓は洛陽郊外にあることになっている(実際は何処だかよく分からないらしい)。

 

その後の歴史はややこしい。

神龍政変で武則天が退位し、武則天によって一度廃された中宗(李隆基の伯父)が復位、中宗が韋皇后によって毒殺された後、帝位についたのが15歳の殤帝。韋皇后は武則天と同じように譲位させて自分が皇帝に収まる気だったらしい。

その韋皇后と殤帝を廃したのが李隆基と太平公主。二人は協力して李隆基の父、睿宗(在位684-690)を帝位につけた。ただ、その後、太子になった李隆基と太平公主は対立し、朝廷での覇権を争うようになる。

 

ドラマ第一季は睿宗が皇帝だった時代のお話だった。第二季は、6話辺りで太子と公主の対立に嫌気がさした(本当にそうらしい)睿宗が太子に譲位、とうとう7話で太子・李隆基が皇帝になった。

 

実在の太平公主はどんな人?

武則天の末娘として生まれた太平公主、中国語Wikiの解説では「公主・政治家」とある。この時代に女性で政治家ってかっこいいな。実際、母親の補佐役として絶大な権力を握っていたらしい。ただ、彼女の名前については「李」姓であること以外はっきりしない。

 

武則天はあんまり評判の良くない人ではあるけど初の女帝、つまり「ガラスの天井」を破った人でもある。志、或いは野心のある女性たちは彼女に続こうとしたらしいことが、一連の歴史からも伺える。太平公主も女帝への野心を持っていた一人だ。

 

睿宗が帝位に就いて以降、太子・李隆基との政治的対立は徐々に激化。とうとう公主が睿宗に太子の廃位を迫り、他に術のなかった睿宗は自ら太子に禅譲してしまった、ということらしい。

結局李隆基こと玄宗は帝位についた翌年に、太平公主と彼女に与する者を一掃した。享年48歳。歴史上の太平公主は二度結婚し、四男三女を設けたが、既に出家したり流罪となった2人を除いて全て処刑された。

-------------------------

…盧凌風がピンチ?と思ったのは、権力争いで負けた側は大抵一族皆殺しの憂き目にあうからだ。案の定、太子側から刺客が送られてきて、いろいろ大変な目に。西の果てに行けば安心、ってわけじゃないのね。

 

実在の玄宗はどんな人?

あまり名前の知られていない太平公主に比べ、玄宗は有名人だ。唐の絶頂期の皇帝であると同時に楊貴妃におぼれ、安史の乱を招いた人。ドラマでは「長安十二時辰(邦題:長安二十四時)」「大唐榮耀(邦題:麗王別妃)」等でもおなじみ。特に「長安十二時辰」の玄宗は、臣下がどの料理に口をつけるかにまで神経を尖らせる程恐ろしい存在として描かれていた。

 

生涯の前半・後半でイメージが余りにも違うので後世の評価もわかれる。皇帝になり権力を掌握した当初は臣下の批判を受け入れ提案を容認し、倹約を奨励し、臣民を気に掛ける「良き皇帝」だった模様。ただ女性には弱かったのか、楊貴妃以前にも寵姫の誹謗中傷により三人の皇子を追放・雑害したりしている。

 

楊貴妃に夢中になって以降、贅沢な生活を送り政治を顧みなくなったため、政治的な腐敗が進む。地位を利用し政敵を謀略の末次々と追い落とした宰相・李林甫の死後、楊貴妃外積である楊国忠らを重用、「安史の乱」を招くことに。都から敗走し、部下に楊貴妃の殺害を要求されやむなく従い、自らも譲位を余儀なくされる。戦乱が収まった後も世を去るまで半ば軟禁状態だったそうだ。

------------------------------

実在の二人は波乱万丈というか、血塗れというか。

ドラマの太子はもっといい人そうだけど、帝位についたら変わったりする…のかな。

 

ドラマでは二人の権力争いは背景として描かれるので、そこまでドロドロしてはいないけれど、それでも刺客に盧凌風と蘇無名の命を狙わせる程度には悪辣。

蘇無名と盧凌風が西域で怪事件を解決している間にも、朝廷では血で血を洗う政争が起きてたりするのかもしれない。

 

太平公主に盧凌風の他に子供がいなさそうだったり、そもそも「公主」と「太子」としか呼ばれなかったり改編部分も大きいので、実際の歴史の通りに物事が動くかどうかはわからないけれど、こんな二人がモデルだと思って観てみると、ドラマの楽しみがちょっと増えるかも。

-------------------------------------

題名:唐朝詭事録之西行 唐朝诡事录之西行 40集

HORROR STORIES OF TANG DYNASTY II TO THE WEST

編劇:魏风华 導演: 柏杉 

出演:杨旭文William Yang Xu Wen 杨志刚Yang Zhi Gang 郜思雯 陈创 孙雪宁

 

lienhua.hatenadiary.com

lienhua.hatenadiary.com

 

lienhua.hatenadiary.com