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面白いけれど何だかもやもやする…「繁城之下」

見終わってからずっと、何だかもやもやしている。…話は綺麗に終わっているんだけど、何となく納得できない。いや、面白かったのだけれど。

 

今流行りの古装探案劇だ。主人公はまだ若い捕快の曲三更(白宇帆 飾)。彼が畑の中で,案山子に見立てた師父の他殺体を見つけたのが事件の発端。正義の人だと思っていた師父の家から大量の金と20年前の一家全滅事件の資料が発見され、調べているうちに第二の猟奇殺人が起こる…。

 

舞台設定は明朝万歴37年だそうだ。明朝の末期、国政を顧みない皇帝の下で反乱は起こるわ、財政は破綻するわ、官僚は足りないわ…という時代。なのでこの街も怪しい物売りやら、路地裏でのカツアゲやら非常に治安が悪い。

おまけに、カメラは華やかであろう街の表面を映さず、路地裏ばかりを捉える。しかも大抵夜。曲三更の新たなメンターとなる典史・宋辰(宁理 飾)の部屋も昼でも蠟燭の明かり一本という暗さ。息苦しくて狭くて暗い。これがドラマ全体のトーンとなる。…繰り返すようだけれどこのドラマ、つまらないわけではない。

 

曲三更は下っ端の捕快で、捜査に協力してくれるのが、いい人だけど余り役には立たない同僚の高士聪(刘怡潼 飾)と頭はいいけど推理はピント外れの秀才凤可追(张昊唯 飾)なので、捜査はなかなか進まない。张昊唯のとぼけた感じは、ヴィラン役より似合っていて癒しだったけど。

ここから先はエンドと犯人について触れています。ご注意ください。

「繁城之下」微博より

第四集になると捜査の進展具合とは全く関係なく、唐突に20年前の物語が描かれ始める。

こちらの主人公は全滅した陸家の書童・陸直(于垚 飾)。子供の目から見る街ってことなのか、街はずれだからなのか、広々として明るい。陸家の屋敷も広々と明るいのだ。この明るいトーンは息抜きにもなるし、20年前と現在を描き分けるには効果的だけれど、ちぐはぐな印象も受ける。というのは、話としては万歴37年の連続殺人事件よりこちらの方が陰惨に思えるからだ。

 

陸家で彼が目にするのは、大人たちの裏の顔だ。街を守るはずの捕快も、立派な人であるはずの夫子も、人の命を助ける医者も、人には言えない悪事を働いている。それらを散々目にした子供はある出来事をきっかけに彼自身バケモノと化す。

 

過去の話が展開され始めれば、犯人が誰かは見当がついてしまうし(そもそも制作側も犯人を隠すつもりはないのかも)物語の最後には真実が明らかになる。(物語としては、ということであって主人公の曲三更が全てを知るわけではない。手記はあくまで一方の側の真実だ)

 

結局のところ、これは「報復」の連鎖の物語だ。

犯人を持ち上げ突き落とした大人たち、彼の不安を煽った大人たちにも罪はあるわけで、20年前の事件はそれらに対する「報復」、20年後の連続殺人はその「報復」に対する「報復」。ラストに起こる事件は連続殺人犯に対する「報復」が引き金。

「報復」の連鎖に対抗できるのは宋辰が掲げる「冤」=不正を正す、つまり真実を明らかにし法により裁くってことなんだと思う。

 

ただ結局は真実が白日の下に晒されるわけではなく、命で命を贖う形で事件は幕を閉じる。

もちろんこの二人の関係を考えると感慨深くはあるのだが。…「九義人」を見た直後だからかもしれないけれど、最後はきちんと法に照らして裁きの場で片を付けてほしかった。そんな時代じゃない、ってことなのかもしれないけど。

 

…まあ最後は宋辰の晴れやかな姿で終わるし(彼はある意味本懐を遂げたということだ)曲三更は自分の正義を取り戻したともいえるので、それで良し、ということなのかも。

 

原題:繁城之下 Ripe Town 12集(最終話は101分)

主演:白宇帆・宁理

脚本・監督:王铮

 

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