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「古相思曲」と2つのショートドラマ 前編

「古相思曲」は流行りの穿越古装もので、30分枠×14集という中国ドラマにしては短い作品だけれど、面白い。

とにかく可哀そうな悲恋もので、最後まで見てから初回を見るとまた泣ける。特別編も上々の出来。低予算なのだけれど、よく練られた脚本と、絞りに絞った登場人物とセット数でそれをカバーしている。

 

「南晟」と呼ばれる(架空の)王朝を研究している青年(郭迦南 飾)が主人公。彼が小説に描いたのは「妖后」と呼ばれる皇后(張雅欽 飾)と対立する清廉な官吏(莊翰 飾)の物語だが、あるきっかけでその世界に飛ばされてしまい、「妖后」その人と出会うことになる。彼女の真実の姿は、語られてきたものとは違っていた…ここまで書くとありふれた物語のようだけれど、このドラマの仕掛けは今まで見たことがなかった。

ここから先はネタバレしています。

「古相思曲」微博より

 

「過去に戻るたびに、より過去に戻ってしまう」これだけのことなのだけれど、すごく新鮮。

何が悲しいと言って「その人に最初に逢った時間は、その人にとっての最後」。第一回で主人公が飛ばされた過去は、彼女が彼に逢って話をできる最後の機会だってことだ。

だから最初に逢った彼女はとても悲し気で優しく彼に接する。でも彼はそれがどうしてかわからない。二人にとって大切な品も会話も、彼にとっては初めてで、惑いから冷たく接する。彼女は真相を知っているので悲し気な顔をするだけ。

 

もう一つは「過去は改変できない」というルールをきちんと守っていること。

何回か時空を超えたのち、彼が最後に彼女に会うのは、彼女にとっては初めて彼に逢う瞬間で、まだ若く自分の運命も知らないまま。この時点で何をしても運命を変えることができないことを知った彼は、彼女に精一杯「生きるすべ」を教える。彼が授けた知恵は彼女を過酷な運命に導きもするけれど、窮地を救うことにもなることを見ている私たちは知っている。

…切ない。

 

主演の郭迦南は「少年歌行」に出てた時は老け役で、同一人物だと気づかなかった。陸鳶役の張雅欽は「少年寸志~」の時も良かったけど、そういえば最近見かけなかったな。今回もだんだんと若くなっていく陸鳶を上手に演じていた。悲しそうな大きな瞳がとても印象的。アクションも上手い。

 

短い作品(30分×14集)なのに、主人公二人の生涯や恋の行方、周辺の国々との関係や政治闘争までが織り込まれており、作り手の手際の良さが際立つ。

監督さんはどんな人だろうと思って調べてみたら、(写真を見る限り)まだ若い女性だった。

他の作品は…さらに短かった。…各話2分!

知竹監督の他の二作品「東欄雪」「长公主在上」については後編で紹介します。

 

原題:古相思曲 An Ancient Love Song 邦題:古相思曲 ~君想う、千年の調べ~

制作年度:2022 配信:Billi Billi 14集

監督:知竹 編劇:鶴唳雲端/戴超超/三千魚/崔嘻喜

主演:張雅欽・郭迦南

 

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