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「九義人(邦題:花の告発~煙雨に仇討つ九義人)」古装劇という仮面を被った硬派な社会派ドラマ

何というか物凄い題材を持ってきたものだと思う。しかもちゃんとエンタテイメントとして成立しているのがまた凄い。

 

恐らくは宋代の地方都市の所謂刺繍学校が舞台。その学校の代表・吴廉(乔振宇 飾)は男性ながら刺繍の腕一本で学校を立ち上げ、その刺繍作品は太后に献上され、その街で権勢を誇っている。

彼には裏の顔があり、学校の女生徒を次々毒牙にかけている。

ドラマは7年前、彼の毒牙にかかった女生徒・蔺如兰が吴廉を訴える事件の顛末と、7年後、彼女の代わりに吴廉を法で裁こうとする親友・孟宛(吴倩 飾)の物語が交互に語られる。

以下、若干ネタバレしています。

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九義人 微博より

7年前の物語では訴えた蔺如兰(胡意旋 飾)が徐々に追い詰められていく様が語られる。周囲の無理解、セカンドレイプ、善意の人々の「忘れなさい」という言葉。見ていて胸が痛くなる。

それを何とか中和してエンタテイメントにしているのが7年後の物語で、孟宛が蔺如兰と関係があった人たち一人ひとりを見つけ出し、説得し、蔺如兰の無念を晴らすために計略を巡らせる様が描かれ、見ているこちらも留飲を下げることができる。

ドラマをご覧になる方は2話ずつ見た方が絶対にいい。ある登場人物が登場→7年前の話→次の回で孟宛の計略が炸裂、という形なので、下手に7年前の分だけ見ちゃうと、ほんと辛くなるから。

 

この構成でなければ、ドラマをエンタテイメントとして成立させるのは難しかったろう。それくらい7年前の物語は生々しい。現代社会でも起こっている問題をこんな風に古装劇として昇華して見せる中国ドラマの制作者には敬服するしかない。ちなみに編劇の一人曹笑天は昨年のヒットドラマ「苍兰诀」の編劇だ。

 

本国ではどう受け止められたのだろうと思って豆瓣を覗いてみたら、どうやら小説では実際に行動するのは元捕快の刘薪(李佳航 飾)なのだそう。確かにその方が整合性は取れそうだけれど、主題が薄れる気がする。一介の町娘だった孟宛があのような立ち居振る舞いを身に着けるまでに、夫ではなく正妻の教えがあったのかもと想像すると、なんだか胸熱。

 

ドラマとしてもウェルメイドで、キャスティングに派手さはないけれど堅実。

数あるドラマの中でも突き抜けた人でなしである吴廉役を引き受けた乔振宇は勇気ある役者さんだと思う。作品に意義を感じていたからこそ、引き受けたんじゃないかなあ。

 

あと、登場する刺繍は大変美しい。小道具としてたくさん登場するだけでなく、刺繍学校の生徒の衣装は胸のところに刺繍が施されていて、それも美しい。小道具さんと衣装さんは大変だったことだろう。

 

原題:九義人 九义人 Faithful (邦題:花の告発~煙雨に仇討つ九義人)

首播:腾讯视频 25集

 

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