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違和感が拭えない「大唐狄公案」(~最終集)

狄仁杰ものってこんな感じだったっけ?という疑問は砂漠の街に舞台が移ってから更に大きくなることに。…最後まで観るには観たんだけど。

今回は辛口でだいぶネタバレしています。ご注意ください。

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「大唐狄公案」微博より 曹娘子が狄公より大きい(笑)

■「黒焔」とは何だったのか…

狄仁杰(周一围 飾)は辺境の砂漠の街・蘭坊に県令として赴任。村を襲う匪賊とか、街で幅を利かせるやくざ者とかが沢山いる処で起こる事件を解決しながら、律令を守らせ秩序を打ち立てようとする。

 

蘭坊の街の影の支配者が「黄金案」(黄金を載せた船の事件)で登場した「黒焔」だ。てっきり黒焔という名前の頭領が束ねる盗賊団だと思っていたけど違っていたようで、ドラマの中の台詞を総合すると、少年兵なども有する「テロ集団」みたいだ。個々の事件を繋ぐ大きな事件として、この黒焔との対決が描かれる…のだけど、お話が矛盾だらけ。

 

「沙漠追凶」に黒焔の一人として登場する刁小官(张若昀 飾)。確かに登場の仕方もカッコよく、狄仁杰との対話シーンも悪くない。

彼の語る「律令は100年しか歴史がないけど、恨みや報復の感情は人の歴史と同じくらい長い(だから律令なんかで抑えようがない)」(意訳)というのには一理あると思うが、その後やったこと(少年をけしかけて復讐相手を殺害させようとする)で台無しだ。人が人を殺すのを観て楽しむ快楽殺人者にしか見えない。…最後に自殺するに至っては、この人物が何を考えているのかさっぱり分からない。

 

黒焔本人(首領ってことなのか、地域のボスなのかも良く分からない)が登場する「雲雀案」は、事件をより残虐にしただけで刁小官の物語とほぼ同じような展開を辿る。しかも性格もそっくり。何で二人の人物に分けたのかよく分からない。犯人の属性については…悪い意味で予想外。そういえばお父さんの自死の話、どこ行っちゃったんだろ?

 

狄仁杰の方も矛盾だらけ。律令は厳格に守られなければならない、と言って辺境の砦の殉死した兵士たちの叛乱を報告するけど、蓬莱では自分の部下の軍からの脱走をなかったことにしてなかったっけ?そうかと思えば黒焔のメンバーの名簿を燃やしちゃったり、行動に一貫性がなさすぎる。

民衆に向かって「法律は大事です!守りましょう!」的なアジ演説をぶっている狄仁杰は何だか選挙中の政治家みたいだ。

 

■名探偵・曹娘子

狄仁杰の妻となる曹娘子(王丽坤 飾)、どうやら「雨師伝説」の原案の一話のみに登場するキャラクターのようだけれど、蘭坊が舞台になると、オリジナルキャラクターとしていきなり活躍し始める。観察力と推理力を発揮しはじめ、狄仁杰が何処から戻ってきたかを衣服の汚れから言い当てたり(ホームズがよくやるやつだ)狄仁杰の話から正解を導き出したり(ワトソン役が狄仁杰だ)。

 

パスティーシュを創作する時にオリジナルキャラクターはよくよく気をつけないと、原作の風味を損なってしまう。今作では部下の喬泰や馬栄が割を食うことに。

黒焔の正体は狄仁杰より早く見破り一人で説得に行っちゃうし(でも捕まる)、最終話に至っては「曹娘子の事件簿」に改名した方がいいんじゃないかと思うくらい、主役。狄仁杰、倒れちゃって活躍しないし、二人の部下は置いていかれて殆ど登場しない。代わりに遺体の検分まで曹娘子が大活躍。

…二話続けて捕まるに至っては、脚本の整合性をスタッフが誰も考えてなかったんじゃないかと疑いたくなる。

 

このドラマ、どうやら二季も既に撮り終わっているみたいだ。

昨今の話数制限で二季に分けたのかもしれないし、最終話は次の舞台(恐らくは都に戻る)に移るまでの閑話休題のつもりだったのかもしれないけれど、この話は「狄公案」とは呼べないんじゃ…。

 

豆瓣の評価は5.7…豆瓣の評価は正しいとは限らないとはいえ、視聴者が観たいものと制作者の見せたいものが大きくずれていることがよく分かる数字だ。

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原題:大唐狄公案 Judge Dee‘s Mystery

原著:高罗佩(ロバート・ファン・ヒューリック)著「大唐狄公案

導演:李云亮 編劇:京榆 32集 2024年

出演: 周一围 Zhou Yi Wei 王丽坤 Claudia Wang Li Kun 张若昀 Zhang Ruo Yun

 

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