個人的に杨紫がとても苦手で最後まで観たドラマは3本、「香蜜沉沉燼如霜(邦題:霜花の姫~香蜜が咲かせし愛~←羅云熙に釣られて観た)」「沉香如屑(邦題:沈香の夢←成毅に釣られて観た)「親愛的、熱愛的(邦題:Go Goシンデレラは片思い)」だけだ。でも今回は杨紫がとてもいい。展開も起伏に富んでいて、面白い。何だかすごく得した気分だ。
ここから先は中盤までのストーリーのネタバレがあります。ご注意ください。
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序盤のストーリーはこんな感じ
牡丹こと何惟芳(杨紫 飾)が大量の嫁荷と共に劉家に嫁いでくるところから物語は始まる。何惟芳は薬を生業とする商家の出身。官僚である劉家とは家柄が釣り合わず、新夫の劉暢(魏哲鸣 飾)は押し付けられた結婚に反発し、妻の部屋を訪れようともしない。嫁荷は知らないうちに売り払われ、家の外に出ることも許されず、義母に挨拶に向かえば「夫に従い家に従うのが妻の役目」と散々説教された挙句侍女のアクセサリーさえ取り上げらえてしまう始末。
夫の劉暢はかつて寧王の娘の公主・李幼貞(张雅钦 飾)と愛し合い結婚を申し込んだものの逆に寧王の怒りを買い、公主は政略結婚させられ、一家は長安から洛陽に左遷されてしまったらしい。なんとしても長安に返り咲きたい劉暢の両親は、何家を騙し大量の嫁荷を伴った娘を輿入れさせた、というのが結婚の顛末だ。
侍女を殺され、自分が騙されていたことを知った牡丹は離婚を画策する。一方、夫と死別した公主が戻ってくることになったことを知った劉家は、新妻を亡き者にして息子を公主と再婚させようと目論む。ひょんなことから都の花鳥使・蔣長揚(李现 飾)と知り合った牡丹は協力を求めるが…。
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とにかく序盤の牡丹がとても気の毒。嫁ぎ先での意地悪は他のドラマでもよくみかけるけれど、「貞女であれ」を表向きの理由にしながら傍若無人な劉家の人たちに腹が立つし、清廉潔白ではあるけど世間知らずな夫は妻が何故離婚を切り出すのか理解できない。籠の鳥状態で全てを耐える主人公には同情するしかない。
その上この辺りの展開はとても速いので女主が気に入るかどうか、考える前に話が進んでいく。
「花鳥使」は唐・玄宗の時代の役職
百度百科によると男主の官職・花鳥使は唐・玄宗の時代に本当にあった役職らしく、ドラマで触れられている通り、皇帝の為に全国の美女を集めてくるという役割だったらしい。ドラマの中の花鳥使・蔣長揚は美女集めを隠れ蓑に、汚職にまみれる高官たちの尻尾をつかみ朝廷を浄化するために働いている。
実際の花鳥使はかなり強引に、身分や既婚・未婚を問わず女性を集めたらしい。唐代の詩人・元稹の「和李校書新題楽府十二首·上陽白発人」という詩には花鳥使に強引に宮廷に連れ去られた女性が、夫や娘にも会えないまま後宮に閉じ込められ生涯を終えざるを得ない哀しみが描かれている。
ちなみにドラマの中には玄宗皇帝も登場する。楊貴妃に溺れる前の若くて有能な皇帝だ。
牡丹と芍薬
いろいろあって身一つで婚家を逃げ出した牡丹は蔣長揚からの出資を受け、母から教えられた牡丹栽培の技術で身を起こすことになる。
中文版Wikiによれば牡丹が「花の王」と称えられるようになったのは唐代からで、女主のいた洛陽は牡丹の一大産地らしい。ドラマの中で主人公があっさり沢山の牡丹の花を咲かせているのを見て、ここだけはちょっと嘘っぽいと思ったけれど、牡丹を土窯の中で温めて冬に咲かせる技術は古くからあったそうで、あながち嘘ということでもないようだ。
ドラマの中で牡丹の花の話をしているのに「芍薬(シャクヤク)」という言葉が出てきて、あれ?と思ったけれど、唐代以前は芍薬と牡丹の区別はされていなかったらしい。
牡丹は「木芍薬」芍薬は「火芍薬」と呼ばれていたのだとか。花もよく似ているし、そもそも牡丹も芍薬科だしなあ。
ドラマはかなり忠実に唐代のあれこれを再現しているらしい(衣装についてはちょっといろいろあったけど)。登場人物の造型は皆美しく、俳優さんたちに良く似合っている。予算少な目ドラマが多い芒果TVにしては頑張っているなあ、という印象だ。
「三従」に抵抗する女性たちの物語
牡丹は屋台から始めやがて大きな花店を経営するまでなるが、その花店には女ゆえのハンデに苦しむ女性たちが集まることになる。浮気性の夫から日々暴力と虐待を受けている五娘、医学の路に進みたいが女ゆえに医師の弟子になれない呂耕春。牡丹もかつての婚家と公主からは命を狙われ続け、元夫からは復縁を迫られ続ける。
「家にあっては父兄に従い、嫁しては夫に従い、老いては子に従う」という所謂「三従」の道徳観を信じる人たちの考えを覆すのは難しい。どんな夫でも逆らう女性が悪であり、年頃を過ぎて結婚しないのも悪、独立して商売するなどもってのほか。
こうした三従を正しいと考える人たちからどうやって「自由と独立」を勝ち取るか、がドラマのテーマだ。牡丹のやり方は必ずしも正攻法ではなく奸計を巡らしたり、それなりに汚い手も使う。バリバリの復讐というより「対面より実を取る」感が強く、その辺りがこの古装劇の現代的なテイストなのだと思う。
花店の経営でもこうした問題は立ち塞がるけれど、その場合の牡丹のやり方は割と女性らしい、というか女性経営者がとりそうな柔らかさと厳しさを混ぜ合わせた手法で、やっぱり現代的。
このドラマで杨紫を苦手に感じない理由って?
何故このドラマの杨紫を苦手に感じないのか、よく考えると理由は二つある気がする。
①「牡丹」が年相応の役であること
女主・牡丹はいろいろ大変な目に合うけれど、大袈裟に怒ったり騒いだりしないキャラクターだ。確かに商売面では主人公補正が入っているけれど万能ではない。有能な女社長という感じが強く杨紫も落ち着いた芝居で、何というか「地に足がついている」感じがする。適度に悪賢い部分があるのも、むしろいい方に作用している気がする。
仏頂面で悪巧みをしている杨紫は(言い方がアレだけど)自然体というか、無理をせず、のびのびお芝居をしているように見える。
②物語が恋愛に関しては淡白に描かれていること
もう一つは、このドラマにおいて恋愛が最重要ファクターではないことだと思う。次から次にいろいろな事態が起こるので、恋愛にかまけている暇がない(笑)。
杨紫と李现は「親愛的、熱愛的」で大成功を収めた組合せだけれど、あのドラマも「ラブストーリー」というよりは「e-スポーツにおける男たちの熱い闘い」という側面が強かった(パッケージのピンク色に騙されてはいけない、と思う)。
今回も杨紫と李现が二人で語り合うシーンは多いのだけれど、ラブシーンというより互いにしんみりしたり、商売の話だったりして恋愛要素は薄い。「気が合うんだろうな」とか「仲良さそうだな」くらいな感じ。二人が度々BBQしているのはとても美味しそうに見えて、夜中に見るのは危険(笑)。
如何にも「可愛い」というキャラクターを封印した、賢明な女社長という役柄は杨紫にとても似合っていると思う。李现は一見強面であってもあたりの柔らかい男性を演じるのが上手な人で、二人のCPぶりは安心して観ていられる。
しっかり描かれるその他のキャラクター
公主・李幼貞はドラマのオリジナルキャラクターだそうだが、彼女の存在がボタンに対する劉家の敵意や、元夫・劉暢の身勝手さを浮き彫りにしてくれる。望まぬ結婚と死別を経て、純真な少女から権力を振りかざす悪女と化した公主だけれど、前回の結婚でそうならざるを得ない事情があったのかもしれない。演じる张雅钦は「古相思曲」「少年游之一寸相思」の女優さんで、どちらの演技もとても印象的だった。
元夫の劉暢は成年になっても出仕もしない読書人。親の言う通りの人生は歩みたくないが、プライドの高さゆえに離婚という恥もかきたくない。牡丹のことを好き、というより自分のものが人手に渡るのはおかしい、と考えているみたいだ。牡丹を守ると言っても具体的な手段は考えておらず、彼女を殺害しようとする両親を止めることもできない。
このどうしようもない男を魏哲鸣は絶妙に演じている。
長安に来てからの最初の友人になる秦五娘(邵芸 飾)は切ないキャラクターだ。夫の暴力と浮気に耐えていたのは、実家が夫の援助を当てにして暮らしているからで、病気がちな弟の為でもある。離婚し「勝意」と名前も変えて生きなおそうとするも、家族や古典的道徳観の頸木からなかなか逃れることができない。「私とあなたとは違う」「自分が嫌い」と訴える彼女の姿には胸が痛む。
どのキャラクターも非常に丁寧に描かれており、丁寧な美術や衣装のお仕事と併せて、とても美しい世界を描き出していると思う。
ドラマは2/3を過ぎていよいよ朝廷の大掃除も佳境を迎えそう。お仕事上のトラブルが次々起こる上に元夫や婚家・公主とのいざこざも未解決。これからどう展開するのか、楽しみ。
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題名:國色芳華 国色芳华 国色芳華 Flourished Peony 32集
原作:「国色芳华」意千重 編劇:张鸢盎「沉香如屑」「香蜜沉沉烬如霜」
導演:丁梓光「以家人之名」「去有风的地方」
出演:杨紫 Yang Zi 李现 李現 Li Xian 魏哲鸣Miles Wei Zhe Ming 张雅钦Zhang Ya Qin